星新一 (ほし・しんいち)

「声の網」 (2008年7月)(Library)

電話をかければ、商品説明を聞くこともお金の支払いをすることも診療を受けることもできる世の中。 便利な電話網が構築されている。 ある日、メロン・マンション1階の民芸品店に、まもなく強盗が入るという電話がかかってきた。 そしてその通り強盗がやってきたが……(「夜の事件」)。 12の物語で明かされる電話の秘密とは?

媒体が電話というのがちょっと違う気がしますが、昭和60年に書かれたお話しとしてはかなり現在に近いというか、さらに先を行っている感じがします。 商品説明やお金の支払いはネットで可能ですが、さすがに診療行為はしていないですよね。 一番怖かったのは「反抗者たち」。 コンピューターが“こんなこと”をしているかと思うとゾッとします。 現実的にも可能な感じがまた怖い。 “こういう”進化は望みませんが、コンピューターにも○○があるとしたら世の中はどうなってしまうのでしょう。 もしかしたらもう“こんな”よのなかになってたりして!?

 

「きまぐれロボット」 (2008)(Library)

お金持ちのエヌ氏は、離れ島にある別荘で1ヶ月暮らす際、なんでもできるロボットを連れて行った。 実際、料理は部屋の掃除、ピアノの調律までこなす優秀なロボットだったが、2日ほどで様子がおかしくなってきた。 帰ってからロボットを製作した博士に問い質すと……(表題作「きまぐれロボット」)。 傑作ショートショート集。

どれも楽しく読みましたが、一番印象に残ったのは「花とひみつ」。 ハナコちゃんの描いた絵が“そんな”ことの発端だなんて。 研究所の人たちも笑えます。 こんな楽しい“ひみつ”が、実はたくさん転がっていたりして。 こんな時代なので、それはそれで喜ばしいことかもしれません。

 

ほしおさなえ

「ヘビイチゴ・サナトリウム」 (2007年7月)(Library)

中高一貫の女子校で、美術部の高校三年生・ハルナが屋上から飛び降りて自殺した。 先輩の死を疑問に思った同じ美術部の中学三年生・海生(みお)と双葉は真相を探り始める。 そんな中、男性国語教師・宮坂が同じように墜落死する。 二人の死には何か関連があるのか? すべてに一生懸命だった少女たちの物語。

本作の紹介文の中に、“独特の言語感覚に彩られた、瑞々しい青春ミステリ”という言葉がありましたが、確かにその通りだと思いました。 この文を書いた方の言う“独特の言語感覚”というのが、私がそう感じたものとは違っているかもしれませんが、会話文の書き方に興味を惹かれました。 まさしく“生きた言葉”という感じ。 大昔に女子高生だった自分を思い出しても「こんなふうにしゃべってたなあ」と感じました。 それをそのまま文章にしてしまう、というのが自分としては“新しい”と感じる部分でした。 内容としては、海生と双葉がもっと活躍するのかと思ったら……、という軽い不満は残りましたが、真相は意外なものだったし、それを想像(推理とは言えない……)していく過程も楽しめました。 女子校がどういうところか理解できないと、感情移入も難しいかもしれませんが。 作中作「DOTS」に関して、「編集部の人は作品を読んで“そういう部分”に気づかなかったのか」とか「そんなに簡単に応募作を見せてくれるのか」という疑問は感じましたが、ひとつの作品として読んでみたいとも思いました。

 

保科昌彦 (ほしな・まさひこ)

「生還者」 (2007年9月)

奥秩父の山の中にある古びた温泉旅館を、台風による土砂崩れが襲った。 20名以上の犠牲者を出したが、4日間も生き埋めにされながら奇跡的に助かった6名は「奇跡の生還者」と呼ばれた。 しかし、その生還者がひとりまたひとりと不審な死を遂げていく。 これは何かの呪いなのか? それとも……。

感想としては、何を言ってもネタバレになりそうなので、「うわあ、そうきたか! やられた……」としか言いようがありません。 でも、「読むんじゃなかった」という意味ではなく、いい意味で「やられた」なので、気になる方はとにかく読んで欲しいです。 私は図書館本を借りたのでよくわかりませんでしたが、表紙が怖いです。 内容には直接は関係ありませんが、図書館で臨時職員(アルバイト)として働く身としては、ちょっと聞き捨てならない部分がありました。 図書館司書・沢井が202ページで言った言葉は司書資格を持たずに図書館で働いている人間を侮辱しています。 自分がそうだから過剰反応しているだけだとはわかっていますが、あまりの暴言に沢井に対する同情心が吹き飛んでしまいました。

 

誉田哲也 (ほんだ・てつや)

「月光」 (2006年12)

姉・涼子が、バイク事故に見せかけて同級生の男子に殺されたと信じる結花は、真相を暴くべく、姉と同じ高校へ入学し、姉と同じ写真部に入部する。 しかし、覗いてはいけない姉の秘密に触れ……。 学園の闇、罪と罰を描く書き下ろし長編。

初めて読む誉田作品でしたが、正直言って微妙です……。 実は途中で止めようかとも思いました。 結果的にはちゃんと読んでよかった、と思える内容でしたが。 何が苦手かと言えば、やはり○描写。 必然性があって書かれているので仕方ありませんが、どうしても苦手意識が拭えません。 涼子が教師・羽田だけに語った秘密が守られたことは本当によかったと思います。 清彦が結花に言った「真実を知ることに意味があるのか」、結花がそれに返した「意味があるかどうかはあたしが決める」という言葉にはどきっとしました。 清彦の「普通じゃない人間の普通じゃない理由なんて聞いたってしょうがない」という言葉にも。 そうすることによって被害者なのに苦しむ人や悲しむ人がいるのなら、犯罪の動機を解明することは必ずしも必要ではないのかな、と思いました。 確かに、報道されなければならない真実もあると思いますが、野次馬根性で他人の不幸を食い物にしたり自分じゃなくてよかったと思いたいだけなら、そっとしておいてあげて欲しいと思います。 こういう言い方は間違っているかもしれませんが、これから結花は涼子の分もがんばって生きてくれることを願います。

 

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