小泉喜美子 (こいずみ・きみこ)

「太陽ぎらい」 (2006年2月)(Library)

ドラキュラを自宅に招待することになった“ぼく”は、ニンンクと十字架、そして家中にある太陽に関する物を隠し、歓迎の準備を万全に整えたはずだった。 しかし、ドラキュラは……(表題作「太陽ぎらい」)。 お洒落で機知に富んだ著者の幻想世界を網羅する12作を厳選収録。

特に印象に残ったのは「観光客たち」と「抹殺ゲーム」。 前者は、いわゆる○○トリックで、まさか“ああいう”オチだとは思ってもみませんでした。 観光客として、行ってみたいような怖いような……。 後者は、クリスマス・イヴに、子供のために買ったゲームにハマった父親が、課長になったとたん○○される、という内容ですが、これまたすごいオチ。 あんなにがんばったのに、気の毒としか言いようがありません。

現在、新刊で入手できる作品がほとんどないそうですが、「弁護側の証人」は、なんとかして読みたいと思いました。

 

小手鞠るい (こでまり・るい)

「空と海のであう場所」 (2007年2月)

かつて同い年の少年と少女だった頃に出会ったアラシと木の葉。 23歳で一緒に暮した始めた二人は、27歳で別れることになる。 しかし、32歳の現在、仕事を通して再び接触を持つことになるが……。 恋愛小説の名手が送る魂の愛の物語。

アラシの育ってきた環境は確かに気の毒だと思いますが、木の葉が言ったように「みんながみんなそうなるわけじゃないんだよ」というのも真実の言葉だと思います。 もちろん、「負けないで」なんて簡単に言われたらアラシはすごく怒ると思いますが、やっぱり“がんばって”もらうしかないんですよね。 木の葉と一緒なら乗り越えられると思います。 遊牧民のように、幸福猫のように、誰かを思って生きていって欲しいです。 作中の童話もひとつの作品として、作・五十嵐有為/絵・架橋木葉で刊行されるといいのに。

 

小峰元 (こみね・はじめ)

「アルキメデスは手を汚さない」 (2006年9月)(Library)

女子高生・美雪が「アルキメデス」という謎の言葉を残して死亡。 そのクラスメート・柳生が教室で食べた弁当で毒殺されかかる。 柳生の姉・美沙子の恋人・亀井が行方不明になる。 その後、美沙子が自宅の密室で死亡していた。 これらの事件は何か関係があるのか。 ‘70年代の学園を舞台に、若者の友情と反抗を描く伝説のミステリー。

香山二三郎さんによる“復刊のための解説”にあるように、大絶賛・満場一致で乱歩賞を受賞したのではないというのはわかります。 謎の大きさとか○○に頼った解決とか、「今だったら(受賞は)たぶん無理じゃないかな」と思われる箇所がいくつかありました。 特に気になったのは、○○○の死の真相について。 刑事・野村が推測はしましたが、それで解決したと言わんばかりに、その後はまったく触れられませんでした。 まあ、本人に確認できないので仕方ありませんが、家族もその後何とも言わないのはどうかと思いました。 ○○を気取った高校生たちが世の中に制裁を下す、と言えば格好良く聞こえますが、「結局はそういうことか……」という部分もあって、ちょっとがっかり。 内藤の祖母が亡くなった経緯や、それに関して彼らがやろうとしたことには期待していたんですが、“ああいう”手段では賛成できかねますね。 一番驚いたのは、弁当をセリにかけていた田中が“ああいう”人だったということ。 最後の最後にあんなふうに登場するとは思ってもみませんでした。 「法律が庶民を守ってくれるなどと〜」という台詞は、認めたくないけどそうだなあ、と思いました。 “手を汚す・汚さない”という意味が、実行したかしないかで決まるなら、“手を汚さない犯罪者”も世の中には大勢いるのでしょうね……。

 

近藤史恵 (こんどう・ふみえ)

「南方署強行犯係 黄泉路の犬」 (2005年9月)(Library)

警察小説シリーズ書き下ろし第2弾。 今回も、新米刑事と女性刑事のコンビが活躍します。

珍しく暇だった南方署強行犯係の元に強盗事件発生の知らせが。 盗られたのは現金2万円とペットのチワワ。圭司と黒岩はチワワの行方を追って、ある場所に辿り着くが、そこには……!

イタイ。 イタ過ぎる。 前作も同様でしたが、今回もかなりイタイです。 動物、しかも犬と猫。 ある事件の真犯人の言い分は、動物保護に関しては納得できるものの、その後の行動はいただけませんね。 気の毒だと思わなくもないけど、結局は、保身のためにああいうことをしたのだから、罪を償わなくては。 次作は、雄哉が事件に巻き込まれるとかするのかな? あまりイタくないといいのですが……

 

「ふたつめの月」 (2007年6月)

契約社員から正社員に昇格され喜んだのも束の間、突然クビを言い渡された九里子。 愛犬トモとアンの散歩の途中で赤坂老人と再会し、相談を持ちかけたが……(「たったひとつの後悔」)。 「賢者はベンチで思索する」の続編。

前作から時系列的に話が進んで、九里子と弓田の関係も……。 「人生はいろいろあるけど悪いことばかりじゃないな」と思わせてくれる作品でした。 明日香、結構かわいいです。 十代だから許されるわがままかもしれませんが、九里子とはいい関係を築いていけそうです。 続編もありだと思うので、次はどんな出来事が起こるのかどきどきします。 赤坂はどうなってしまうのでしょう。 哀しい結末にだけはして欲しくありません。

 

「モップの魔女は呪文を知ってる」 (2007年7月)(Library)

スポーツクラブのプールで「火傷をした」という女性が現れ……(「水の中の悪意」)。 バイトを掛け持ちしてペットショップの猫を手に入れた女子大生が、ある日アパートへ帰ってみると……(「愛しの女王様」)。 小児病棟に勤務する新米看護師は、「魔女っているの?」と子供たちに聞かれ……(「第二病棟の魔女」)。 発作的に妹を殴り殺してしまったアクセサリー通販会社社長は……(「コーヒーを一杯」)。 深夜の清掃員・キリコが謎を解く。 シリーズ第3弾。

一番印象に残ったのは「愛しの女王様」。 ○○の取った行動は、結果的には間違っていたと思うけど、思いやりから出たことなので、誰も不幸にならずに済んでよかったな、と思いました。 プリンもカスタードも、きっと幸せに暮らせると思います。 「第二病棟の魔女」では、まんまと騙されました。 絶対悪いのは○○だと思っていたので、真相が明かされたときには「○○○という職に就いている人がそんなことをするなんて」とショックでした。 ひとつのことにしか目が向けれらず周りが見えなくなってしまったのでしょうが、同情も共感もできませんでした。 そんなことをして幸せになれるでしょうか。 ○○○という職業の意義を思い出して欲しいと思います。 次にキリコちゃんに会えるのはまた2年後かな。 待ち遠しいです。

 

「サクリファイス」 (2007年9月)

勝つことを義務付けられている<エース>と、それをサポートするためだけに走る<アシスト>が、冷酷なまでに分けられた自転車ロードレースの世界。 <エース>石尾を擁するチーム・オッジに所属する<サポート>要員の白石誓(しらいし・ちかう)は、初めて抜擢された海外遠征で思いも寄らない悲劇に遭遇する。 過去に石尾が関わった事故も含め、明らかになる真相は……。 書き下ろし青春ミステリー。

ずっと、石尾は嫌な奴だと思っていました。 彼のサポート・赤城はことあるごとに石尾を擁護しますが、「いくら<エース>だからってそこまでしていいのか」と憤りを感じていました。 でも、過去の事故の真相が明らかになって、考えが変わりました。 もちろん、石尾が取った行動は正しいとは言えないしやり過ぎと言えるほどのものでしたが、そもそもの原因を作った○○は、ああなってしまったのは自業自得ではないかとも思います。 ○でしまったのでは弁解も言い訳も正しいことですら主張することはできませんが、どちらが正しいかと言えば石尾だったのだろうと思います。 白石には、自分のためだけではなく、石尾の分もがんばって走って欲しいと思いました。

 

「タルト・タタンの夢」 (2007年12)

下町の片隅にある〈ビストロ・パ・マル〉は、カウンター席7席とテーブル5つの小さなフレンチ・レストランだ。 そこのシェフ・三舟は、10年以上もフランスの田舎のオーベルジュなどを転々としながら修行したという、無精髭・長髪・無口の変わり者。 しかし、味は一級品で、常連も多数。 そんな客たちの巻き込まれた不可解な出来事の謎を鮮やかに解いていく。 絶品料理の数々と、極上のミステリーを召し上がれ。

〈パ・マル〉は、シェフ・三船の他には、もう一人の料理人・志村、ソムリエ・金子、ギャルソン・高築の3人しかいない小さなビストロですが、料理そのものも美味しく、サービスも行き届いていて心地よさそうなお店です。 お値段もそこそこのようだし、ぜひ一度行ってみたいと思いました(笑)。 内容としては、あまり悪意に満ちたものはなく(まったくないわけではありませんが)、刺々しい雰囲気ではなかったのでホッとしました。 一番印象に残ったのは「ガレット・デ・ロワの秘密」。 志村がフランスでの修行時代にあったことを妻・麻美が語り、そのからくりを三舟が見破るというものですが、ほんわかして可愛い話じゃないですか! そりゃあ、恥ずかしくもなりますね(笑)。 「ぬけがらのカスレ」もよかったです。 「小雪が<パ・マル>に来なかったら」「御木本が小雪を<パ・マル>に招待しなかったら」と思うとゾッとします……。 口にしなければわからないこともありますが、自分ひとりの早合点で事を急ぐのも危険だなあ、と実感しました。 今後の小雪は幸せになったと思います。 続編希望。

 

「ヴァン・ショーをあなたに」 (2008年8)

下町のフレンチ・レストラン、〈ビストロ・パ・マル〉で働く4人が、近所に住む田上家のスキレットが錆びる理由(「錆びないスキレット」)、フランス風のパンを売りたいとはりきっていた女性パン職人が突然姿をくらました理由(「ブーランジュリーのメロンパン」)、常連の新城さんが必ずブイヤベースをオーダーする理由(「マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」)など、見事に解決してみせます。 「タルト・タタンの夢」続編。

今作も、あまり悪意のあるキツイと感じる内容はなかったのでとても読み易かったです。 一番印象に残ったのは「氷姫」。 切ない……。 杏子の気持ちもわかるし、圭一の気持ちもわかるし。 最後に“ああいう”ことになってしまったのは残念です。 どちらにより感情移入してしまうかで考え方は変わってくると思いますが、今回は杏子の味方という感じで読んでしまいました。 男性なら圭一の立場で考えてしまうかもしれませんね。 せめて杏子が○○であるよう祈るばかりです。 「ブーランジュリーのメロンパン」もちょっと切なかったかな。 誰もが誰かのことを考えて、その結果うまくいくこともあればいかないこともあるし。 棲み分けというか共存共栄というか、どちらも必要なことがある、ということを改めて考えさせられました。 個人的には〈ブラン〉のほうが好きかも。

 

今野緒雪 (こんの・おゆき)

「マリア様がみてる 未来の白地図」 (2005年12)(Library)

自宅で編物をしている祐巳のもとに、柏木から電話が。 瞳子が家を出たまま帰らないという。 心当たりに電話をしようとするが、捜すまでもなく瞳子は祐巳の家へやってきた。 事情を尋ねられずにいる祐巳は……。 

ライトノベルの中でも、さらに特殊な位置を占める“ソフト百合”な「マリア様がみてる」。 すっかりハマって、アニメDVDやドラマCDまで購入する始末(笑)。 女子高出身なので、結構わかります。 さすがに姉妹(スール)制度まではなかったけど。 なかなか話が進展しないのも、このシリーズのいいところ。 でもいい加減、祐巳の妹を決めてください。

 

「マリア様がみてる くもりガラスの向こう側」 (2006年3月)(Library)

祐巳は瞳子にロザリオを突き返される。 三日後、祥子から届いた手紙は小笠原邸で催される泊まり込み新年会の招待状。 新年、三薔薇姉妹が勢揃いし、祥子の母・清子を交えて百人一首や人間双六をして楽しく過ごす。 そこへ祥子の父・融と婚約者・柏木優がやってきて……。

瞳子はなかなか手強いけれど、いつか祐巳の妹になればいいなと思います。 今回特に気になったのは、人間双六(笑)。 部屋数がいくつあるかわからないほどの小笠原邸だからこそできるゲームですが、できるものなら参加したいと思いました。 祥子と優の関係も進展したようなしないような。 これからどうなるのか、こちらも楽しみです。

 

「マリア様がみてる 仮面のアクトレス」 (2006年6月)(Library)

三学期最初の大きな行事は、生徒会役員選挙。 現在山百合会で活動している祐巳・由乃・志摩子は当然立候補するが、大きなサプライズとしてある人物が名乗りを上げた。 三人は、揃って薔薇様になれるのか……?

前作同様、祐巳の妹問題はなかなか進展しませんが、最後に少し何かが動いたような……。 既に姉妹(スール)になっている志摩子と乃梨子はもちろん、姉である令が卒業してから入学してくる菜々を妹にしようとしている由乃も楽しみながら学校生活を送っているので、早く祐巳にもその平和が訪れますように。 でも、もう少しで祐巳の姉・祥子と由乃の姉・令が卒業してしまうんですよね。 そうなったら、「マリみて」はどうなっちゃうんだろう……。 その前にも卒業生は出しているので、まだまだ続くとは思うけれど、ちょっと寂しい気がします。

 

「マリア様がみてる 大きな扉 小さな鍵」 (2006年10)(Library)

生徒会役員選挙は無事済んだものの、以前関係の進展しない祐巳と瞳子。 乃梨子、祥子、柏木までもが心配している。 そこへ、新聞部から山百合会へバレンタイン企画が持ち込まれる。 今年はいったいどうなるのか。 瞳子が祐巳を避ける理由とは……?

瞳子に、祥子さえ知らなかった“あんな”秘密があったなんて!? 確かに、周りの人に対して疑心暗鬼になってしまうのは仕方ないのかも……。 でも、祐巳が「瞳子を妹(スール)にしたい」という気持ちまで疑うのはひどいです。 祐巳がそんな人間じゃないことはわかっているはずなのに。 それすらもわからなくなるほど瞳子は傷ついていたということなのでしょうけれど。 瞳子のそばに乃梨子がいて本当によかった。 親友というとくすぐったいかもしれませんが、二人はそういう仲になれると思います。 祐巳と瞳子もいつかは姉妹(スール)に……。 バレンタイン企画の騒動は次巻以降だと思いますが、それも楽しみです。

 

「マリア様がみてる クリスクロス」 (2006年12月)(Library)

時は214日、バレンタインデー。 リリアン女学園では新聞部主催・次期薔薇さまのお宝探し大会が催される。 果たして赤・黄・白のカードを探し当てるのは誰なのか。

前回の宝探し大会も面白かったですが、今回は新しい試みがなされたりしてさらに面白い。 由乃の隠し場所、最高です(笑)。 2分冊で言えば前編に当たる今作ですが、瞳子の叫びに祐巳はどう答えるのか!? 志摩子のカードはいったいどこに? 早く続きが読みたいです。

 

「マリア様がみてる あなたを探しに」 (2007年3月)(Library)

新聞部主催・次期薔薇さまのお宝探し大会も無事終了。 由乃は令をめぐってライバルでもあるカード発見者のちさととデートする羽目に。 祐巳のカードを発見したのは○○か、それとも○○か。 そして妹問題は? 志摩子のカードは発見されず、不在者チャンスに投票した中から正解に一番近い生徒がデートの権利を得るが……。 三者三様の波乱含みのデートはいかに。

祐巳の妹問題、やっとここまで来たんですねえ。 感慨深いです。 まあ、はっきり○○になったわけではありませんが、今後の展開が楽しみです。 志摩子のカードの隠し場所は、ヒントがあるとはいえ難しい! 普通ならわかりませんよ〜。 デートの展開も一番波乱含みでハラハラドキドキ。 乃梨子の気持ちがよくわかります。 瞳子の過去は哀しいものでしたが、桂木のようにちゃんとわかってくれている人もいるのだから、もっと前向きにがんばって欲しいと思います。 さあ、次のイベントは……。

 

「マリア様がみてる フレーム オブ マインド」 (2007年6月)(Library)

バレンタイン企画が終わり、半日デートの少し前、祐巳は教室で写真の整理をしている蔦子を見かける。 写真部の部室が使えないというので、薔薇の館に誘い、二人で写真を見ていると……。 写真にまつわる姉妹たちのスペシャル・ストーリー。

本編を少し離れたいわばサイドストーリーで、薔薇様たちはほとんど登場しませんが、こういうのもいいですねえ。 他の姉妹たちのエピソードが描かれていたりするわけですが、一番印象に残ったのは「不器用姫」。 そんなつもりはなくても、受け取る側が違う方向から見ているのでは、気持ちは全然伝わらないんですね。 なんだか哀しかったです。 「ドッペルかいだん」も面白かった。 ホラーテイストなのに面白いというのも変ですが。 ドッペルゲンガーの正体は……。 まさか“あの人”だとは(笑)。 そりゃあ、誰にもわからないはずです。 薔薇姉妹のお話も気になりますが、こういうワンクッションもまた読みたいです。

 

「マリア様がみてる 薔薇の花かんむり」 (2007年10)(Library)

日曜日の半日デートで、祐巳は瞳子と姉妹になることを決意。 翌日、いつもより早く登校した祐巳は、マリア像の前で瞳子と出会う。 昼休みに再びマリア像の前で会う約束をしていったん別れるが、その後祐巳は信じられないものを見て……。

「おお、やっとこの日が来ましたか!?」という感じ。 そうです、祐巳と瞳子が○○になったんです。 まあ、帯にも文庫のあらすじにも書かれているので伏せることもないかもしれませんが(笑)。 それにしても本当に長い道のりでした。 紆余曲折があってこそ絆も固く結ばれるというものですが、祐巳の高校生活もあと一年。 楽しい思い出が作れますように。 祥子が何を勉強していたかという問題は次巻に持ち越し。 ずる〜い。 私は○の○○を取るためだと思っていますが、果たして真相は……?

 

「マリア様がみてる キラキラまわる」 (2007年12)(Library)

三年生を送る会の翌日、祥子の呼びかけでみんなで遊園地へ行くことに。 祥子は開園時間には到着したいと気合充分で、祐巳の家へ柏木と一緒に彼の車でやってきた。 祐麒も含め、4人で出かけることになるが、途中、運転席に座ったのは……!

前作での祥子の“謎”は、やはり○○取得でした。 しかし、彼女も無謀な……。 1週間前に取った○○を振りかざし、将来ある若者を道連れにするなんて(笑)。 まあ、無事だったので結果オーライでしょうか。 遊園地へは、令・由乃、志摩子・乃梨子、蔦子・笙子、瞳子・可南子もやってきますが、それぞれに事情を抱えていて……。 当人たちにとっては深刻ですが、彼女たちの悩みやすれ違いには微笑んでしまいました。 それにしても、蔦子のおじさんはナイスでした。 カメラの代わりに○○って(笑)。

 

「マリア様がみてる マーガレットにリボン」 (2008年4月)(Library)

下級生へのバレンタインデーのお返しのラッピングに悩む、祐巳・由乃・志摩子の3人。 せめて手作りで、ということで端切れとミシン、アイロンを使って巾着を作ることに。 その過程で、お姉さまや卒業された薔薇さま、イタリアの修学旅行のことなど、どんどん話しが広がっていって……。 オール書下ろしの短編集。

面白い! よかった! 今までの作品の中で、ある意味一番好きかもしれません。 既刊を読んでいないとわからない内容ですが、読み易かったし過去の話を思い出して「ああ、こんなこともあったよね」と懐かしくなったりして、とても楽しめました。 一番空きなのは「青い傘の思い出」。 “あの”傘が、“こんな”ふうにいろいろな人のもとを通り過ぎてきたなんて。 とてもロマンチックです。 特に、律子とヨウちゃんが幸せになりますように。

 

「お釈迦様もみてる 紅か白か」 (2008年8月)(Library)

福沢祐麒は仏教系の花寺学院高校一年生。 入学式の日、校門を入って程なく、左右に分かれて進む新入生たちを目にし、意味がわからず困っていた。 誰かに聞くこともできずうろうろしていると、見ず知らずに先輩に追いかけられ……。 「マリア様がみてる」主人公・祐巳の弟・祐麒が主人公の姉弟編、ついに登場。

「マリみて」にも度々登場するユキチこと祐麒が主人公の「釈迦みて」、ついに登場。 彼の入学当時からの内容なので、今まで知らなかった過去が明かされます。 “こんな”過酷な運命を辿っていたとは……(笑)。 さすが男子校、というノリで、男性が読めば「あるある」とか「ないない」とか共感できるのでしょうが、高校が女子校だった私にはまったく未知の世界で、「実際にこんなだったら大変そう……」というのが正直な感想です。 「マリみて」ではあまり発揮されていない(と思われる)、祐麒の男らしさが垣間見れてよかったです。 花寺にも“ああいう”制度があるのには驚き。 男性同士で……。 実際にあったらびっくりです(あるかもしれないけど)。 祐麒の受難はさらに続きそうですが、どう乗り越えて行くかが楽しみです。

 

今野敏 (こんの・びん)

「隠蔽捜査」 (2006年1月)

警察庁長官官房総務課長の竜崎は、東大卒の46歳。 連続殺人事件のマスコミ対策に追われていたが、衝撃の真相に気づく。 保身に走る上層部、上からの命令に苦慮する現場指揮官、混乱する捜査本部。 警察組織の威信を守るために、孤立無援の竜崎が取った行動とは……。 書き下ろしの新・警察小説。

“事件は会議室で起きてるんじゃない。 現場で起きてるんだ”というのももっともですが、それはどちらの視点から見るかということで変わってくるものでもあると思います。 確かに、捜査活動をするのは現場の捜査員ですが、大元の指揮を執るのはキャリアと呼ばれる官僚。 その中で、東大卒でありながら毛色の変わった官僚である竜崎は、“こんな官僚ばかりだったら、世の中も暮らしやすくなるだろうな”と思わせるような人物。 実際にはいそうもないと言ったら言い過ぎかもしれませんが、現在の警察組織の中でこの考え方で生き残っていけるとは思えません。 竜崎の選択した行動はすべていい方向に進んで、ちょっと綺麗過ぎかなとも思いましたが、せめて小説の中ではそのくらいのハッピーエンドがちょうどいいのかもしれません。 これからの竜崎の活躍に期待しています。

 

「膠着」 (2006年11)

“受かったのがここだけだから”という理由で、糊の総合メーカー・スナマチに入社した丸橋啓太。 研修を終えて配属されたのは営業部。 慣れない仕事に四苦八苦の中、大口取引先・マルコウの注文数を間違えて発注してしまい青ざめる啓太。 そんな彼を救ったのは上司・本庄だった。 その本庄ともども携わることになったのは大失敗の新開発製品をなんとか製品化するためのプロジェクトチーム。 啓太は未曾有の危機に揺れるスママチを救うことができるのか。 書き下ろしの新商品開発物語。

今野作品は警察小説しか読んだことがないのですが、こういう作品もお書きになるんですね。 ぐいぐい引き込まれて、あっという間に読んじゃいました。 最初は逃げ腰の啓太が、失敗や危機を乗り越えて一人前の社会人になっていく成長物語でもあります。 本庄のような営業の才能はないかもしれませんが、誠実さで注文を取れる営業マンになってくれると思います。 登場人物で誰がいいって、それはもちろんスママチの社長・園山です。 こういう経営理念を持った人物が社長なら、会社も安泰だし社員も働いていて楽しいと思います。 本庄が啓太に語った、「アメリカの真似をしても〜」という言葉には納得させられました。 確かにそうだと思います。 スナマチのような会社なら、私も働きたいです!

 

「果断 隠蔽捜査2」 (2007年6月)

息子の不祥事で大森署署長に左遷されたキャリア・竜崎。 その管内で強盗事件発生。 緊急配備が敷かれる中、別の事件が通報されるが……。 襲いくる様々な圧力に、竜崎は打ち勝てるのか。 “隠蔽捜査”シリーズ第2弾。

結果から言えば、竜崎はカッコいいです。 現実にはあり得ないことかもしれませんが、こういうトップなら部下も仕事のし甲斐があるのではないでしょうか。 それを支えているのは妻の冴子。 彼女なくしては現在の竜崎はあり得ません。 大事にして欲しいと思います。 戸高が“ああいう”人だとは思いませんでした。 人間も、同じ方向からだけ見ていてはいけないのだな、と実感しました。 まあ、ダメなものはダメ、ということも多々ありますが。 続編もありそうなので、期待しています。

 

「TOKAGE 特殊遊撃捜査隊」 (2008年2月)

大手銀行の行員3名が誘拐された。 犯人の要求は10億円。 警視庁捜査一課特殊犯捜査係の覆面捜査部隊“トカゲ”の一員である上野は、初めての誘拐事件捜査に挑む。 銀行側が非協力的な態度を取る中、警察は真犯人を突き止め、人質を無事に救出できるのか。

人質が行員3名という時点で、真相はある程度読めました。 それしかないでしょう、という感じ。 ただ、残念なのは動機です。 もっと大きな目的があっての犯行かと思っていましたが、実際は……。 それまでの捜査の流れが緊迫感漂うものだったので、真相に近づくにつれて「ええ〜、そんなあ」という気分になってしまいました。 作品がよくないということではなく、個人的な好みの問題ですが、真犯人の動機がちょっと……でした。 トカゲの皆さんは大変ですね。 もちろん、警察の方はどなたも大変ですが。 涼子が隊長なら間違いない、という感じ。 上野も、もっと訓練と経験(少ないに越したことはありませんが)を積んで、立派なトカゲになって欲しいと思いました。

 

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