久坂部羊 (くさかべ・よう)

「無痛」 (2006年6月)

一目見ただけで患者の病気が治るものかそうでないものかわかる二人の医者がいた。 ボロアパートで診療所を営む為頼と、大病院を経営する白神だ。 彼らの身辺で起きた閑静な住宅街の教師一家惨殺事件。 自分がその真犯人だという精神障害施設の少女。 その施設で働く臨床心理士・菜見子。 白神のもとで働く先天性無痛症のイバラ。 彼らはどう関わっているのか、真相はいったい……。

現役の医師らしく、今回も医療モノでした。 でも、正直言って読むのがツライ部分が多々あって、菜見子の元夫・佐田が○されるシーンはとてもじゃありませんが読めませんでした。 佐田は菜見子にストーカー行為を繰り返し、○んだほうがいいような男でしたが、その○され方は尋常じゃありませんでした。 犯人の○し方が尋常じゃないと言うほうが正しいのでしょうが。 早瀬という刑事の、刑法三十九条に対する思いには同感でした。 どんな理由があれ、罪を犯して責任を取らなくていいなんておかしいと、ずっと思っていました。 少年法は年齢のごまかしが効きませんが、心神喪失は装うことができるからです。 読後、少し考えが変わった部分はありますが、基本的には疑問は解けないままですね。 “ホラーもミステリーも超えた衝撃作”と言われていますが、“ああいう”ふうに終わらせたのが、ホラーとも言われる所以でしょうか。

 

黒木昭雄 (くろき・あきお)

「臨界点」 (2007年2月)

東京湾晴海埠頭の沖合で発見された死体は、元警視庁巡査部長でジャーナリストの中川一邦だった。 殺人事件として捜査本部が立ち上がるも、事故死として処理され3日後には本部は解散となった。 不審を抱いた警視庁捜査一課の楠木宗一郎は、月島東署刑事・菊山エリカ、大都新聞社会部記者・新城康之らとともに極秘で再捜査を開始した。 次第に明らかになっていく真相は、日本国を未曾有の大混乱に陥れる重大な秘密だった……。 元警視庁巡査部長がリアルに描く警察小説。

中川が突き止めた真相が、実際に行われていることだとしたら驚きです。 そして、楠木が辿り着いた真相にもさらに驚き。 “あんなこと”があっていいはずはありません。 一般市民は誰を、何を頼ったらいいのかわからなくなってしまいます。 今作を読んで特に感じたのは、「“正義”は常に正しいのか」ということでした。 言い換えれば、「真相を明らかにすることが必ずしも正しいことなのか」という意味ですが、今作ではそれをしみじみ感じました。 最終的にはいい方向へ戻りますが、それまでの道のりは大変なものでした。 暴かれるような不正などないにこしたことはありませんが、そういう不正などはたいてい“上の方”がやっていることで、現場の人間はまったく与り知らないことで、それなのに怒りの矛先にされるのは身近にいる現場の人間だったりしますよね。 もちろん逆に、現場でしかできない不正の後始末を“上の方”がやらされる場合もあると思いますが。 とにかく、暴かれるような不正や明かされるような真相をしない・作らないことが一番大事なのではないでしょうか。 楠木や菊山、新城もがんばったと思いますが、一番カッコイイと思ったのは楠木と同期の刑事課長・石堂。 管理職でここまでやってくれるのは見事です。 そうするよう仕向けたのは楠木ですが、やると判断したのは石堂本人なので、やはりホンモノの刑事なのでしょう。 実際の警察官の現場がどれだけ大変なものかは想像するしかありませんが、社会の安定のためにがんがっていただきたいです。

 

黒田研二 (くろだ・けんじ)

「結婚なんてしたくない」 (2005年12)

“結婚なんて考えられない”という男性5人が登場。 それぞれの立場で物語が進んでいく中、いつしか微妙にリンクし始めて……。

最初のうちは、ミステリーだとは思いませんでした。 でも、「黒研さんだし……」と思っていたら、なるほどそういうことですか! リンクする理由は結構わかりやすかったですが、余計なところまで疑っちゃったりして。 でも、あんな○性がいたら、確かに結婚をためらう気持ちもわからないでもないかも。 一番気がかりなのは香澄ちゃんのこと。 まっとうに育ってね(笑)。 アーサー・ゴッドフリーの名言には、思わず笑っちゃいました。 でも、「男性からの意見だけでは、片手落ちじゃない?」というのは、女性である私からの意見です。 要するに、お互い様ってことですよ。 ただ、“ひとりよりはマシ”というような理由なら、よく考えたほうがいいかも。 

 

「カンニング少女」 (2006年5月)

都立高校に通う天童玲美は、姉・芙美子の死の真相を探るため、最難関私大の馳田学院を受験する決意をする。 しかし、担任・安倍に「この成績では受験の許可は出さない」と言われ、成績トップの愛香・機械オタクの隼人・陸上部で芙美子の後輩だった杜夫の協力を得て、決死の“カンニング”に挑むことに。 校内の定期試験、大学の模試、そして入試で、彼らはどうやって“闘う”のか。

まあ、どんな理由があろうとも、カンニングは不正行為であり、許されることではありませんが、それは置いといて。 何より驚いたのは、カンニングの技の凄さですね。 ハイテク技術を駆使して、昔ならあり得ないような技が次々と! 隼人には、その能力を別の方向で生かして欲しいと思います。 芙美子が敬愛していた咲田教授の助手・鈴村女史の学生に対する見方には、共感を得る部分が多かったです。 みんながみんな○○だとは思わないし、自分がかつてどうだったかを考えれば偉そうなことは言えませんが(笑)。 ただ、鈴村女史にも、“許す”とか“受け入れる”ということを覚えて欲しいと思いました。 玲美がこれからどうなるかはわかりませんが、次からは正々堂々と勝負をして、生徒のために一生懸命になれる教師を目指して欲しいと思います。

 

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