永井するみ (ながい・するみ)

「さくら草」 (2006年7月)

ローティーンの少女たちと、その母親たちに圧倒的に支持されているジュニアブランド・プリムローズ。 その洋服を身に纏った少女が殺された。 それは偶然なのか、それともプリムローズ・ロリータと称される変質者の仕業なのか。 捜査の方向が定まらない中、第二の殺人事件が起きて……。

第三章まではぐいぐい引き込まれて読みましたが、第四章になって真犯人が明らかになっていく過程はちょっと……。 真犯人を推理しながら読んでいて、まったく思いもよらなかったのは私の力のなさなので文句を言う筋合いではありませんが、○○や○がほったらかされたまま終わってしまったような気がして……。 プリムローズの社長兼デザイナー・桜子や、ゼネラルマネージャー晶子の恋人・木谷も、人間として魅力を感じませんでした。 少年課刑事・理恵と晶子が、もっと交流をもてたらよかったのにと思いました。

 

「ダブル」 (2006年12)

被害者の女性が特異な容貌であったことから注目を浴びていた自動車事故の目撃者は、彼女が何者かに突き飛ばされたようだったと語っていた。 また、その女性が利用していた駅で痴漢容疑をかけられた会社員の男性がその駅の階段で転落死を遂げた。 事件か事故か、警察の捜査は進展しない。 それらの未解決事件を追う女性フリーライター・多恵が辿り着いた驚愕の真実とは!?

すごい! 面白い! 読み易い! ぐいぐい読まされてしまい、あっという間に読了してしまいました。 ちょっともったいないくらい。 タイトル「ダブル」の意味は、真犯人に言われるまでわかりませんでした。 それにしてもすごい動機。 確かに、そう考えたくなる気持ちもわからなくはありませんが、まさか本当に手を下すなんて。 心の中で「あんなやつ○んじゃえばいいのに」と思うことは、正直言えばたま〜にあります。 “○んじゃえば”とまではいかなくても、少なくとも“私の目の前からいなくなれば”くらいは。 真犯人が○○○だというのもすごい。 多恵に告白していたとある過去は、作り話かと思ったら事実だったというのにも驚き。 多恵が○されてしまうのではないかと心配しましたが、聖司の登場で事なきを得て安心しました。 終わり方もいい感じ。 “その後”は自分で○○できるし。  多恵のこれからの活躍に期待します。

 

「カカオ80%の夏」 (2007年4月)

現在は母子家庭に暮らす、大人びた風貌の女子高生・凪。 ある日、クラスメイトの雪絵に頼まれて買い物に付き合うことに。 その雪絵が失踪し、凪は思わぬ事件に巻き込まれていくが……。 ハードボイルド風ミステリー。

理論社ミステリーYA!シリーズの一環として刊行されたもの。 若い世代に向けた作品ですが、オトナも充分楽しめます。 個人的には、講談社ミステリーランドより値段も安いし読み易い感じがしました。 内容はというと、ちょっと裕福な家の女子高生が友人を探して謎に突き当たって、ということでAJさんを連想させますね。 雪絵が○○に関与していなかったのは救いでしたが、ああいう純粋な気持ちを利用するという手口は最低です。 凪の母親・美貴の恋人のことや、凪と○○のこと、雪絵のこれからのことなど、続編があればぜひ読みたいです。 ちょっと気になったのは、凪は未成年なのに飲○するシーンがあったこと。 昨今芸能界でも未成年の飲○や喫○などでいろいろ騒がれているので、若い世代に向けた作品ならなおのこと、フィクションとはいえそういうシーンはないほうがよかったかな、と思いました。

 

「グラデーション」 (2007年12)

友達や家族、憧れの人との関係の中で、進学や恋愛、就職の悩みなど、誰にでも訪れる当たり前のような出来事を自分らしく受け止め、真紀は少しずつ大人になっていく―。 自分自身を投影するような、心地好い等身大の少女の成長物語。

中学時代にはまだ幼い感じの真紀も、高校生ともなると少し色気づいたりして(悪い意味ではありあません)、バイトや部活に励んで「がんばってるな」という感じが可愛らしいし羨ましかったです。 自分の過去を振り返ると、「ああしておけばよかった」ということばかりで、あまりいい思い出がないので……。 ただ、○○は最低でしたね! あんなヤツの本性を見抜けなかったのは残念ですが、勉強したと思って成長の糧にして欲しいです。 大学時代、□□との出会いはある意味運命的なものでしたが、“ああいう”結果になるとは……。 ○○のようなヤツではなかっただけマシですが、結果的には真紀が傷ついてしまったので気の毒でした。 これも成長の過程で必要な出会いだと思って、次こそはがんばって欲しいと思います。 身近に目を向ければ、きっといいことがあるはずです。 仕事も、教職でもアート教室でも真紀なら大丈夫だと思います。 若いうちにしかできないことを一生懸命やって欲しいと思います。

 

永瀬隼介 (ながせ・しゅんすけ)

「退職刑事」 (2007年9月)

定年まで勤め上げた者(表題作「退職刑事」)、離婚した妻が育てていた一人息子が自殺したのを機に辞めようとしている者(「レディ・Pの憂鬱」)、警視庁の組織織犯罪対策部を辞めて郷里に戻った者(「帰郷」)、23年前の未解決事件を引きずる者(「神隠しの夜に」)、祖父と父の名を汚すまいと一生懸命だったが道を踏み外してしまった者(父子鷹))。 いろいろな“退職刑事”のドラマを描く全5編の短編集。

永瀬作品は初めて読みましたが、ちょっと想像というか期待していたような内容ではありませんでした。 面白くなかったというわけではありませんが、裏の部分というか暗い部分が前面に出過ぎていて、個人的にはあまり好みではない内容でした。 一番印象に残ったのは「帰郷」ですが、「あの時違う道を選んでいたら」と思うと、主人公・相馬が気の毒でなりません。

 

中村航 (なかむら・こう)

「100回泣くこと」 (2005年10)(Library)

主人公・藤井は、高校を卒業した春に、図書館で子犬を拾った。 現在は、印刷機器の設計技師として働いている。恋人の佳美と、“結婚の練習”を始めたある日、佳美が体調を崩す。病院へ行くと、再検査・入院・手術という経過に。ブックと名付けられた犬も老化により体調を崩し、仕事の忙しさも手伝って、藤井は精神的にも多忙を極める。 懸命に闘病生活を送る佳美はどうなるのか、ブックは回復するのか、彼女たちを見守る藤井の運命は……?

精緻にしてキュート。 清冽で伸びやか。 野間文芸新人賞作家が放つ恋愛長編。 

……ぼろぼろ泣きました〜。 図書館・犬・恋人の○○と○というのは、ある意味ズルイです。 泣かないわけがありません。基本的に恋愛小説は読まないのですが、これは読んでよかったです。 “泣く”というのは、自浄作用ですよね。藤井も、たくさん泣いて、いい意味で過去をふっきれたと思います。 可能なら、彼のその後の話も読んでみたいです。 うまく伝えられませんが、とてもいい作品でした。

 

「星空放送局」 (2008年1月)

牛乳が大好きな少女が、牛乳配達の少年に書いた手紙(第一話「出さない手紙」)、月からやってきたといううさぎのために、月になろうとしたカラス(第二話「カラスは月へ」)、素敵な歌と、もっと素敵な“あるもの”を届けてくれるDJとその仲間たち(第三話「星空放送局」)。 それぞれがメッセージとなり、さらにリンクしてひとつの奇跡が生まれます。 絵・宮尾和孝。

ひとつひとつ分けて考えることは不可能ですが、あえて一番好きな内容は、と言えば第二話「カラスは月へ」。 うさぎとカラスが登場人物(動物)なのでイラストはモノトーンですが、それがさらに哀しさを誘いました。 悲観的な内容ではないはずですが、このうさぎもカラスも生物としては○んでしまったと思うと、なんだか切なかったです。 実際に“星空放送局”があればいいのに! 絶対リクエストします。 というか働きたいです(笑)。

 

中村文則 (なかむら・ふみのり)

「悪意の手記」 (2005年9月)

第133回芥川賞受賞作家。 これは、第18回三島賞候補作品。

ある難病に罹った少年の、闘病時から治癒・再発までの手記、という形態で書かれた小説。と言っても、闘病記というわけではなく、死への恐怖や、そこから派生したあらゆるものへの憎悪など、ほとんど初めて読むような内容の作品でした。 なので、うまく感想が書けません……。

雄一郎(手記の書き手)に救いがあるとすれば、武彦と祥子に出会えたことでしょうか。著者がどう意図したかはわかりませんが、リツ子が復讐による殺人について述べている箇所を読んで、私がこれまで考えていた復讐による殺人について、少し考えさせられました。

 

「土の中の子供」 (2005年10)

第133回芥川賞受賞作。 他に「蜘蛛の声』収録。

親に捨てられ、遠い親戚の家でありえないような虐待を受けて育った主人公《私》。 27歳の現在、白湯子という、不幸な過去のある女性と同棲しながら、タクシー運転手として生活している。 しかし、幼児体験からか、自分から暴力を引き寄せてしまうきらいがある。 二人に再生の日々は訪れるのか。

「悪意の手記」よりは、読みやすかったです。 暗い・重い・痛い・辛い、という感想は同じですが。 ↑よりは、(内容に)救いがあったのが、せめてもの(私にとっての)救いでしょうか。 さらに「蜘蛛の糸」のほうが読みやすかったです。 短かったから? あまり救いはありませんでしたが。

 

「最後の命」 (2007年7月)

昨夜、“私”の携帯にかかってきた電話はかつての友人・冴木からのものだった。 7年ぶりに会う約束をしたが、彼は一体どういうつもりなのだろうか。 “あの出来事”とそれにまつわるいくつかの事柄を、私はまだ整理できていないのに……。 芥川賞受賞後発の長編小説。

難しい……。 というかやっぱり暗い。 “深遠なテーマと向き合い、辿り着いた著者の新境地!”となっていますが、「いかにも」という感じは変わっていないと思います。 子供の頃の体験が成長過程でトラウマになってしまうというのはよく聞くことですが、確かに“あんなこと”があったら、何かがおかしくなってしまうのは当然かもしれません。 自分たちに責任のないことで精神的に追い詰められてしまうのは気の毒だと思いました。 しかも、○ち○れないまま○んでしまった冴木はなおさら。 香里と一緒にいることで、“私”が○ち○ってくれればいいと思いました。 最後から8行目の“私”の言葉は、とても印象的でした。

 

夏樹静子 (なつき・しずこ)

「見えない貌」 (2006年12)

「メル友と会う」と言って出かけ、行方不明になった娘・晴菜。 見つかったのはダムに沈められた無残な姿だった。 事件を追う母親・朔子は、独自の力である真相に辿り着くが……。 著者、5年振りの長編推理小説。

前半は朔子の、後半は“真犯人”の弁護人・タマミの視点から描かれています。 朔子が、晴菜のことを知りたい一心でいろいろな人に会い、娘がどんな気持ちでいたかを知るにつれて自分を責めていく姿が気の毒でした。 仲の良い母子でいようとするあまり、嘘を吐いているという意識はなくても本当のことが言えなくなることがある、というのはわかる気がします。 朔子が自分を責める必要なないと思いますが、“真犯人”に自分を○させるつもりなのは途中でわかりました。 確かに、「逮捕されて裁判を受けて罪を償っても晴菜は帰ってこない。 ならば……」と思ったのは仕方のないことかもしれません。 晴菜の祖父・伸造が「なぜ殺人犯に弁護士がつくのかわからない」というようなことを言っていましたが、個人的にも日々疑問に思うことでもありました。 人を殺しておいて自分は生き延びる、刑務所に入って罪を償って一からやり直す、というのが信じられないという気持ちはあります。 殺された人はやり直すことはできないのだから。 ただ、タマミの視点からの後半を読んで少し考えを改めた部分もありましたが、やはり殺人は殺人で、○をもってしか償えないのではないかとも思います。 事件が起きたそもそもの原因は○○にあると言っては言い過ぎかもしれませんが、女性としてはそう言いたくもなりますね。

 

「四文字の殺意」 (2007年3月)

ひめごと。 ほころび。 ぬれぎぬ。 うらぐち。 やぶへび。 あやまち。 4文字の言葉に心の闇を揺さぶられた人々。 第10回日本ミステリー文学大賞受賞記念作品集。

特に印象に残ったのは「ほころび」。 事件そのものはなんということもない真相だと思いますが、千穂と功平の関係はそもそも間違っていると思います。 最初の選択が誤っているからといって、それがずっと過ちのままだとは思いませんが、やはり心を残したものがあると、正しい道には進めないのかもしれません。 千穂が軌道修正できることを願います。 「あやまち」は、最後に明らかになる事件の真相がなんとも言えませんでした。 誰が悪い、とも言えないような気がしますが、里花も恵も心の傷が癒える日が来るといいのですが。 タイトルに呼応したような終わり方がまたすてきでした。

 

「夏樹静子のゴールデン12(ダズン)」 (2008年4)(Library)

生後4ヶ月半の娘・あゆみを、不注意で死なせてしまった母親は、子供を命より大切に思っている夫と3人で死ぬことを考えるが……(「死ぬより辛い」)。 産婦人科医・高瀬のもとに届いた中元の品は……(「宅配便の女」)。 ミステリー界の第一人者として活躍してきた著者が、作家生活25周年を記念して全短編の中から選りすぐったベスト12篇を収録した作品集。

「死ぬより辛い」―既読は今作のみでしたが、よく覚えていました。 こんな“真実”を知らされたら、私だって○○すると思います。

「宅配便の女」―“こんな”形で○○し、“こんな”方法で○○するなんて、よっぽどのことがない限りできません。

「カビ」―一番好きな作品です。 実際できてしまいそうなところがスゴイ、というか怖いです。

「一瞬の魔」―“こんな”男を信用するなんて! 女子行員の皆さん、注意しましょう。

 

夏原武 (なつはら・たけし)

「小説 クロサギ」 (2008年2月)(Library)

人を騙しその財物を奪い取る“シロサギ”、異性を餌として心や体を弄び、時には資産までも奪い取る“アカサギ”、そして“シロサギ”と“アカサギ”だけを餌とする“クロサギ”。 詐欺に遭った父親が家族を殺害、自分も自殺を図り、一人だけ生き残った黒埼は、復讐のために“クロサギ”になった。 贈答詐欺師・石垣をカモに選んだ黒崎だが、他愛もない仕事に思われたこの事件は、思いも寄らない凶悪事件へと繫がっていた―。 漫画「クロサギ」の原作者自ら手がけた、漫画版とも映画版とも違う、完全オリジナル小説。

アイドルグループ・NのY・Tさんが主演したテレビドラマは観ていましたが、原作コミックは読んでいません。 映画もどうしようかな、と思っていましたが、とりあえず小説を読んでみました。 個人的にはツボである○○がテーマなので入り込んで読めましたが、どうしてもY・Tさんのお顔がちらついて……(笑)。 内容としては、「詐欺にはこんなやり方もあるんだ」と勉強になったと思う反面、「恐ろしいな」とも思いました。 そして、騙すために信用させるというやり方は許せないとも思いました。 詐欺は犯罪なので許せないのは当然ですが、騙された人が○んでも平気だなんて信じられません。 これでは、「クロサギ、がんばれ!」と言うしかありません。 黒崎が○○を果たす日が来るかどうかわかりませんが、目的を果たしたとして彼は幸せになれるのでしょうか。 ○○することを糧に生きている彼が、とても気の毒だと思います。

 

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