野沢尚 (のざわ・ひさし)

「ひたひたと」 (2007年5月)(Library)

打ち明けるにはあまりにも凄絶な秘密を持つ5人がネットを介して集まった。 バーで知り合った女医とのことを語る轡田芳雄(「十三番目の傷」)、少女時代に受けた傷から話し始める河野加寿子(「ひたひたと」)。 彼らの秘密とはいったい……。 著者の急逝により、5話のうち2話しか書かれなかった短編集。 着手寸前だった「群生」のプロットも収録。

「十三番目の傷」「ひたひたと」はそれぞれ独立した短編としても読めるのですが、やはり連作短編として完結した作品を読みたかったです。 重過ぎる秘密を他人に打ち明けて、少しは楽になれるのでしょうか。 芳雄よりも加寿子の秘密のほうがびっくりしました。 まさかあのときの犯人があんな形で姿を現すなんて……。 加寿子が最後にあんなことをするのも結局はそいつのせいなのでしょう。 気の毒といえば気の毒ですが、後味はよくありませんでした。 これらの秘密を繋ぎ合わせて、どういうエンディングになるのか、やはりきちんと読みたかったです。 「群生」のプロットはほぼ小説の形になっていて、このままでも充分作品と言えるような内容でした。 もちろん、書き込みが足りない部分もあるので、こちらも完成形を読みたかったです。

 

乃南アサ

「いつか陽のあたる場所で」 (2007)

小森谷芭子(こもりや・はこ)には、ちょっとしたワケがある。 ご近所の噂にびくびくし、警官の姿を見かけてはどきりとしながら、祖母の残してくれた谷中の家でひとり暮らしをいる。 友人・綾香も同じようにワケあり。 下町の片隅で第二の人生を踏み出したふたりはこれからどうなる!? 可笑しくて切ない新シリーズ。

ふたりとも、やってしまったことは事実だし、それに対して○を○ってきたことも事実です。 なので、こそこそする必要はないと思いますが、確かに自慢することでもないと思います。 これから同じ過ちを犯さなければいいことだと思うので。 ちょっと残念なのは、芭子の動機。 若さゆえと言えばそれまでかもしれませんが、両親や弟が“ああいう”態度に出てしまうのは仕方ないかもしれません。 対して綾香の動機には共感できました。 「そこまでする前になんとかしておけば」と後悔は残りますが。 それにしてもムカつくのは、綾香のバイト先のパン屋の兄ちゃん。 「あんた、何様!?」と言ってやりたい。 あいつのパンは絶対食べません! 版元が新潮社さんならではと言いますか、“あの人”がゲスト(?)出演しています。 芭子たちとどう絡んでいくのか、続編も期待大です。

 

法月倫太郎 (のりづき・りんたろう)

「怪盗グリフィン、絶体絶命」 (2006年4月)

ニューヨークの怪盗グリフィンのもとに、ある依頼が舞い込んだ。 いわれのない盗みはしない主義のグリフィンだが、彼を納得させる事情があった。 しかし、それはある事柄の前哨戦でしかなかった。 グリフィンは、無事仕事を遣り果せるのか。

実は、短編はアンソロジーで数編読んでいますが、私にとって実質上初の法月作品でした。 興味はありつつも、なかなか読む機会がなく、今になってしまいました。 しかし、このミステリーランドは面白い! どんでん返しに次ぐどんでん返しなど、次はどうなってしまうのか、興味津々であっという間に読んでしまいました。 また、人物のネーミングが面白い。 パストラミやコフキーモ、バチアタリーノやガルバンゾー(今名前を確認するまで、“ガンバルゾー”だと思ってました……)など、美味しそうな名前や笑ってしまう名前など。 最後に、アグネスと……と思っていましたが、そうはなりませんでしたね。 第2弾はあるのでしょうか。 「怪盗グリフィン、万事休す」とか。

 

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