恩田陸 (おんだ・りく)

「ネクロポリス」(上)(下) (2005年10)(Library)

懐かしい故人と再会できる聖地――アナザー・ヒル。 死者たちを『お客さん』と呼び、暖かく迎えるヒガンという祝祭空間。その平穏なはずの空間に、連続殺人や天変地異が起こり、ヒガンの行方が危ぶまれる。 数々の事件の真相は……?

まあ、要するに彼岸がベースになっているわけですが、こういう再会ならしたいかも、と思いました。連続殺人の真犯人もわかったし、謎は解けたと思いますが、微妙な終わり方でした。 ○○あり、なのかも。 装丁も、凝った作りでとても素敵でした。

 

「エンド・ゲーム 常野物語」 2005年12(Library)

“「裏返され」たら、どうなるの?” 正体不明の存在「あれ」と戦い続けてきた常野一族の拝島一家。 最後のプレイヤーとなった娘・時子が誘い込まれたのは、罠と嘘の迷宮だった……。 常野物語、最新作。

同じ常野物語でも、「蒲公英草紙」とはずいぶん内容が異なります。 どちらが好きかと言えば「蒲公英」ですが、まあこれはこれで。 ただ、想像して気持ちのいい場面が少なく、時子の過去に出てくる鎖に繋がれた云々というのは、それだけで気分が悪くなりました。 時子が感じた、“運命の人”“出会うべくして出会った”という観念はわかります。 それが、必ずしもいい方向に向かうという保障はないにしても……。 最後に巻き込まれた高橋が、悲しい思いをしませんように。

内容とは別に、最近気になっていることが……。 ええと、改行、多いですよね? 1文で1行なんてザラだし。 なんだか、スカスカした印象がするのは気のせいでしょうか。

 

「チョコレートコスモス」 (2006年3月)(Library)

W大の1年生・佐々木飛鳥は、学内にたくさんある演劇集団のひとつに参加する。 不思議な魅力を持った彼女を、先輩の新垣や巽は“天才”なのか“天然”なのか計りかねている。 一方、芸能一家に生まれ仕事も順調な東響子は、伝説の演劇プロデューサー・芹澤泰治郎が手掛ける舞台のオーディションを受けようとするが断られてしまう。 そんな二人が同じ舞台上で感じたものは……。 熱狂と陶酔の演劇ロマン。

最初、誰の視点で書かれているのかよくわからなかったのですが、主役は飛鳥ということでいいのでしょうか。 飛鳥の過去だけでも、ひとつの話が書けそうな感じです。 飛鳥のお兄さんや響子のお父さんは、彼女たちのことをよくわかっていて、人生の先輩として、素晴らしい指導者だと思いました。 葉月やあおいも、これからもっと経験を積んで、みんなで演劇界を盛り上げていって欲しいと思います。 作中作として登場する、巽(=恩田さん)の書いた「目的地」や、神谷(=恩田さん)の書いた「チョコレートコスモス」を、実際に舞台で観たいと思いました。 もしくは脚本を読むだけでも。 また、引用された「欲望という名の電車」と「開いた窓」も未読なのでいつか読んでみたいと思いました。 「夏の名残の薔薇」で引用された「去年マリエンバートで」もそうですが、過去の名作を「読んでみたい」と思わせる恩田さんの筆力は素晴らしいです。

 

「三月は深き紅の淵を」 (2006年5月)(Library)

読書好きの鮫島功一は、それを理由に会社の会長の別宅に二泊三日の招待を受けた。 彼を待ち受けていたのは、会長を含む好事家たちと、その屋敷にあるはずの『三月は深き紅の淵を』という稀覯本を探すという使命だった(第一章 待っている人々)。 たった一人にたった一晩だけ貸すことが許された幻の本をめぐる珠玉のミステリー。

久しぶりに再読しましたが、大好きな作品のはずなのに、意外と内容を覚えていないのに愕然としました。 一番好きなのは第三章 虹と雲と鳥と。 恩田さんのお得意のパターンという感じで、感受性の強い女子高生を描かせたら右に出る者はいませんね(単に好みの問題と、私が他の作家さんをあまり知らないからでもありますが)。 美佐緒と祥子の関係はともかく、ある男が過去に犯した罪も、最期に美佐緒の母親に明かされる真相も、とても刺激的で哀しいものでした。 ちなみに、私だったら雲を選びます。

 

「中庭の出来事」 (2006年12)(Library)

瀟洒なホテルの中庭で催されたティー・パーティーの最中に、気鋭の脚本家が謎の死を遂げた。 自殺なのか、他殺なのか。 周りにいたのは、次の芝居のヒロイン候補たち。 警察は、彼女たちを疑うが……。 芝居の台本と現実が交錯し、眩暈がするような展開の中、真相を見破ることができるか。

“眩暈がするような”というより、本当に眩暈を感じました。 どこからどこまでが○○で、どこは○○で、というのが一読しただけでは掴み切れません!(泣) ぜひ本当に舞台で上演したいただきたいところです。 配役は、栗山千明さんと鈴木京香さんと浅丘ルリ子さんあたり? あ、後ろのお二人は「木曜組曲」にも出演されていましたね。 どういう観点から捉えるかで、“面白い”か“わからない”かの評価も分かれることと思いますが、個人的には面白かったと思います。 既刊の、ある恩田作品を思わせる感じもしましたが、新しい恩田ワールド展開という感じ。 時間に余裕ができたら再読し、真相をよ〜く見極めたいです。

 

「朝日のようにさわやかに」 (2007年3月)(Library)

理瀬シリーズの番外編で、ヨハンが活躍する「水晶の夜、翡翠の朝」、クリスティの「ABC殺人事件」へのオマージュというアンソロジー企画のために書いた「あなたと夜と音楽と」、“GOD”というテーマの「異形コレクション」のために書いた「冷凍みかん」など、全14編収録の、「図書室の海」以来5年振りの短編集。

14編とはいえ短編ばかりなので、さくさく読めました。 既読も6作あったし。 特に印象に残ったのは「水晶の夜、翡翠の朝」。 既読ですが、何度読んでもヨハンはすごい、と感じます。 個人的には黎司が好きなのですが、“ああ”なってしまった以上は仕方がないかな、と。 理瀬シリーズ三部作の最後を飾る「薔薇のなかの蛇」を心待ちにしています。 連載が始まったり単行本が刊行されたら、何かが終わってしまうような気はしますが……。 「冷凍みかん」もすごい。 確かに“GOD”ですねえ。 こんなモノを託されたら気が気ではありません。 駅で冷凍みかんを買うのはやめましょう(笑)。

 

「木洩れ日に泳ぐ魚」 (2007年7月)(Library)

ヒロとアキが、最後に迎えた夜。 明日の朝には部屋を引き払って別々の人生を歩むのだ。 その前に、明かされなければならない真実がある。 あの旅で遭遇した、ある男の死について……。 運命と記憶、愛と葛藤が絡み合う。

「婦人公論」で既読でしたが、まとめて読むとまた感慨深いものがあります。 “ある男の死”や“ふたりの過去”などのミステリー部分よりも、ヒロとアキの○○感情のほうが気になってしまいました。 出会った瞬間に“運命”を感じたふたり。 でも、越えてはならない一線があって……。 ○○小説なら哀しくて泣けそうです。 明らかになった真相を前に、アキの気持ちが動いたのもわかるような気がしました。 確かに、○○があれば燃え上がりますもの。 それがなくなったとしたら……。 しかも、ヒロは全然“いい男”じゃないし。 アキも言ったように、自分では○○しない、できない男。 相手に○○させる男。 それがいいという人もいるでしょうが、私から見ても魅力的には映りません。 ふたりが○ょ○○○でなかったことは結果的にはよかったのでしょう。 あとは、実沙子が不幸にならないことを願います。

 

「いのちのパレード」 (2007年12)(Library)

かつて「幻想と怪奇」というジャンルのくくりでおなじみであった、奇妙でイマジネーション豊かな短編群に今なお影響を受け続けている著者が、同じような無国籍で不思議な短編集を作りたい、という思いつきから出来上がった全15編の摩訶不思議な作品集。

確かに摩訶不思議……。 個人的には、あまり読み易い内容ではありませんでした。 幻想、奇想、怪奇、などのジャンルには慣れていないので、一度では読みこなせない感じです。 そんな中、「あなたの善良なる教え子より」は共感や納得して読むことができました。 “私”がしてきたことは、いわば○○人ですよね。 正直言えば、“それ”には賛成です。 現代の法律では犯罪にしかなりませんが、それ以上の犯罪を見過ごしているくらいなら、そうすることもやむなしと思います。 実際、自分に“それ”ができるとは思えないし、身近に○○人がいたとして普通に接することができるかどうかも自信はありませんが、少なくとも紙の上では「よくやった」と賞賛できます。 そもそも○○人が必要な世の中が間違っているのであって、みんなが幸せに暮らせるようになるのが理想ですよね。 理想はあくまでも理想で、実現には程遠いかもしれませんが、せめて“それ”をしなくても済むような世の中になるといいのに……。

 

「猫と針」 (2008年2月)(Library)

高校時代の友人・オギワラの葬式の帰り、久々に学生時代の仲間・サトウ、タナカ、ヤマダ、スズキ、タカハシが集まった。 彼らはかつて映画研究会に所属していた。 監督デビューしたタカハシが、撮影にかこつけてみんなに声をかけたのだが、その真の意図とは……。 “人はその場にいない人の話をする”。 著者が、演劇集団キャラメルボックスのために初めて書き下ろした戯曲。

舞台も観ましたが、本作を読んでもやっぱり……でした。 映画と舞台、小説と戯曲、作り方が違うので比べるのは間違っているかもしれませんが、どちらかというと「木曜組曲」のほうが好みです。 どちらも○っ○○しない点では同じですけど。 いろいろ○は残ったままですが、それが「恩田色」なのでそれを楽しむのが筋なのでしょうね。 ○○○と○○○○は今後どうなるのでしょう。 また戯曲を書く機会があるかもしれませんが、刊行待ちの単行本もなんとかしてください、恩田さん。

 

「不連続の世界」 (2008年8月)(Library)

大手レコード会社の音楽プロデューサー・塚崎多聞は、散歩の途中で木の上にいる“木守り男”を発見。 友人の美加やジャンヌに話すと、ホームレスや猫じゃないかと言われるが……(「木守り男」)。 友人・ロバートと“死にたくなる歌”の話をしていた多聞は、ラジオで流れた“セイレン”について調べていた(「悪魔を憐れむ歌」)。 デビューの決まったバンドのミュージッククリップを撮影のために、メンバーのひとり・保の故郷へ赴くが、彼は気乗りしない様子で……(「幻影キネマ」)。 翻訳家の友人・巴とともに砂丘を訪れた多聞は、美術館で青年が消えるという事件に出くわし……(「砂丘ピクニック」)。 尾上・黒田・水島、三人の友人に誘われ、さぬきうどんを食べに夜行列車で出かけた多聞は……(「夜明けのガスパール」)。 「月の裏側」の塚崎多聞が再登場。 詩情と旅情あふれる、恩田版「怖い話」。

「きゃーっ!」という怖さではなく、そこはかとなく怖い内容でした。 特に印象に残ったのは「夜明けのガスパール」。 本当に多聞が○を○していたのかと思い、どきどきしてしまいました。 確かに、○めたくないことが起こると、心が拒否するというのはわかる気がします。 幸いなのか、私にはそこまでの出来事は起こっていませんが、こうなったらいやだな、と思うことはあります。 多聞、がんばれ。 ちょっと驚いたのは、今作が5作品中の最後に発表されたものではないということ。 「これで終わり」という感じがしたので。 まあ、可能ならさらなる続編を期待していますがどうでしょう。

 

「きのうの世界」 (2008年9月)(Library)

「塔」と「水路」のある町のはずれで、一人の男の死体が見つかった。 1年前に失踪した彼が、なぜそんな場所で殺されたのか? 「丘」に掛けられた水無月橋にはどんな意味があるのか? 「塔」と「水路」の秘密とは? 静かで驚きに満ちた世界、予想できない結末の最新長編。

べるつくさんのご協力で新聞に連載されたものを読んでいましたが、それから結構時間が経っているので内容はあまりよく覚えていませんでした(汗)。 「なんとなく不思議な感じだったな〜」というくらいしか印象がありませんでしたが、今回読んでみて「まさしく“恩田陸”的な作品だ!」と改めて感じました。 個人的には“こういう”展開や結末は「う〜ん……」という感じですが、帯に「これは私の集大成です」とあるように、“恩田陸”的といえばまさにその通りだと思います。 実際に、市川吾郎のような“能力”を持っている方がいらっしゃるかどうかわかりませんが、こんな能力は絶対欲しくないと思いました。 パソコンやコップ、海や川など、どんなものにも容量には限界があるので、“こんな”能力が備わっていたらどうにかならないわけがありません。 吾郎の人生を思えば気の毒としか言いようがありませんが、これ以上苦しまなくて済むためには“こういう”結末しかなかったのでしょうね。 その後、この町がどうなったのかも気になります。

 

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