瀬尾まいこ (せお・まいこ)

「強運の持ち主」 (2006年5月)(Library)

短大卒業後、事務用品会社の営業をしていた吉田幸子は、上司との折り合いが悪く半年で仕事を辞めてしまった。 収入を確保するためアルバイト情報誌で選んだのはなんと占い師の仕事。 ジュリエ数術研究所で、ジュリエ青柳の指導を受け、ルイーズ吉田という名前を頂戴する。 しばらくして独立し、ショッピングセンターの片隅で一人気ままに仕事をしていたが、そこに“強運の持ち主”が現れた……。

一番印象に残ったのは「ニベア」。 堅二の気持ちもお父さんの気持ちもよくわかります。 「いくらなんでも8歳にもなれば気付くだろう!」というツッコミはこの際しません。 おじいちゃんたちも含めて、堅二を気遣うあまりのことなので。 確かに、ニベアは懐かしい匂い(香りというより匂い)がします。 ルイーズと“強運の持ち主”の関係もいい感じです。 我が家の休日も結構そんな感じです(笑)。 おしゃれをして出掛けるもの大事だけれど、ゆっくりゴロゴロするのも楽しいものです。

 

「温室デイズ」 (2006年9月)(Library)

小学生のとき、クラスメイト・優子をいじめていたみちるは、中学に入りクラス中からいじめられる側になってしまった。 ひとり黙々と自分のすべきことをこなすみちるを、助けたくても手が出せない優子は、教室に行くことを拒否し、相談室に通うようになった。 ぬるま湯のような部屋へみちるを誘うが、彼女は戦うことを選んだ。

いじめの描写が妙にリアルで、読んでいてとても辛かったです。 そんなことをして楽しいのかな、と思いますが、やっている人たちは楽しいとか楽しくないとか考えてもいないのでしょうね。 年齢的に、中学生に感情移入するのはちょっと難しく、どうしても親目線で見てしまいますが、自分の子供がいじめっ子だったらいやだなあ、と思います。 もちろん、いじめられるのはとても辛くいやなことですが、それを行っているのが自分の子供だったらと思うとぞっとします。 人をいじめて平気でいられるなんて、普通の神経じゃないし。 みちるは、とても強いと思います。 いくら空手を習っていて、精神的に強いものを持っていると言っても、やはり女子中学生なんです。 それなのに、クラス中からいじめられても学校に通い続けるなんて、なかなかできないことだと思います。 まったく味方がいないわけではなかったことが救いになってはいても、並大抵の根性ではがんばり通せなかったはずです。 高校へ行っても、大人になっても、自分の居場所でがんばって欲しいと思いました。

 

「戸村飯店 青春100連発」 (2008年4)(Library)

大阪の下町にある中華料理店・戸村飯店にはふたりの息子がいるが、見た目も性格も正反対。 高校卒業後、兄・ヘイスケは東京で小説家になるための学校へ通い始めるが1ヶ月足らずで辞めてしまう。 残された弟・コウスケは、店の後を継ぐつもりで残りの高校生活で思い出作りに励むが、父に「進学しろ」と言われ慌てて受験勉強を始める。 離れて暮らす兄弟が、再会をきっかけにお互いや家族、人生そのものを見つめ直していく―。 切なさと笑いが満載の青春物語。

いや〜、泣けました。 トシのせいか(笑)、家族モノには涙腺がやられますねぇ。 それまでは仲が悪いというわけではないけど、特に話もしなかった兄と弟が、離れて暮らす中で人生相談めいたことを語り合い、それぞれの進路を見出していくなんて、N○Kでドラマ化して欲しいくらいの内容です。 ヘイスケもコウスケも、それぞれに悩みがあって、けれどお互いそれには気づいていない。 傍から見ればこうだと思える部分も、自分からすればそうじゃない、とか。 何事にも裏と面があるということですね。 お互い、自分の居場所を見つけられてよかったと思います。 お父さんがまたカッコイイ。 ちゃんと息子たちのことをわかってるんですね。 これからも戸村飯店は安泰です。 続編希望!

 

関田涙 (せきた・なみだ)

「晩餐は『檻』のなかで」 (2007年4月)

仇討ち制度が施行され、そのために用意されたのは「檻」と呼ばれる建物。 いまここに7人の男女がいる。 彼らにはそれぞれの「殺人者」「被害者」「共謀者」などの役割があり、自分の役割以外を知らない者もいる。 本当のことを話す義務はなく、誰にも気が許せない状況である。 やがて、ひとりが死体で見つかり……。 メフィスト賞受賞作家、渾身の長編。

ネタバレしないよう感想を書くのは難しい……。 内容に触れないように書こうとすると「とりあえず読んでください」としか言えないし(笑)。 “こういう”作品はもちろんほかにもあると思いますが(具体的には思いつきませんが)、個人的には楽しめました。 7人の役割を推理しながら読みましたが、当たりませんねえ(笑)。 先入観を持ってはいけない、という見本でしょうか。 それにしても作家と編集者というのは本当にこんな関係なのでしょうか。 もちろん、売れっ子作家さんとそうでない作家さんとは待遇が違うと思いますが、渡部はちょっと酷いのでは……。 錫井に問題がないとは言いませんが、大人でも誉められれば伸びると思います。 原書房さんにはぜひ錫井イサミ著「檻のなかの七匹の獣」も刊行して欲しいです。 もちろん表紙・章扉は北見隆さんで! 

 

仙川環 (せんかわ・たまき)

「無言の旅人」 (2008年2月)

交通事故で意識不明になった三島耕一。 家族や婚約者が見守る中、安土という男性が病室を訪ねてきた。 彼によると、耕一は尊厳死の要望書を作成していたはずだという。 耕一の父・安雄が部屋を探すとそれは見つかった。 一緒に、万が一の際には呼んで欲しい人物のリストも添えられていた。 本人の希望を叶えるべきか否か、家族や婚約者、医者は激しく葛藤する。 しかし、苦渋の決断を下し、お別れの日まであと5日というとき、耕一は突然息を引き取った。 殺人か、医療ミスか? 婚約者・公子は、耕一の妹・香織とともに原因究明に乗り出すが、その真相とは……。

難しいテーマです。 尊厳死を認めるかどうかというのは、周囲の人間や病院によって変わってしまうものでしょう。 本人の意思が書面できちんと示されていても、それを実行するのはたやすいことではありません。 耕一がそう望んだからと言って「はい、そうですか」と人工呼吸器を止めるわけにはいかないのは当然です。 公子や、母親・芳子、安雄、香織、それぞれに言い分や考え方があって、それが必ずしも一致するわけではないし、誰もが自分の主張を通そうとしたら耕一の意志が通らない。 水掛け論になってしまいますが、スイッチを切るか切らないかで生と死をわけることになると思えば、簡単に答えが出ないのは当然です。 耕一が事故に遭ったのはまったくの不運で、もっとみんなと話をしていればこんな悲劇は生まれなかったと思います。 耕一は、一度大病を患って死の淵から生還したとはいえ、若く元気なうちに尊厳死について家族で話し合うというのは難しいことかもしれません。 でも、だからこそ、安雄たちや公子ときちんと話し合うべきでした。 その時間すら、事故によって奪われてしまったわけですが。 結果的に、○○は○○者になってしまいましたが、その気持ちはわからなくもありませんでした。 耕一があのメールを送信していれば、と思うと残念ですが、○○の考えも間違っているとは言えないのではないでしょうか。 自分だったら、と思うと難しい問題ですが、たぶん尊厳死を望むと思います。 ただ、それが相手に対して負担になってしまうことを考えると、簡単に言えることではありませんが。 逆に、そうしてくれと頼まれたからといって、それを叶えてあげられる自信はありません……。 「そこにいるだけであっても、生きているのだから」「それは周囲の人間の満足であって、本人にしたらどうなのか」という堂々巡りになってしまうと思いますが、真剣に考えなければいけない問題だと思います。

 

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