司城志朗 (つかさき・しろう)

「相棒―劇場版―絶体絶命! 42.195km東京ビッグシティマラソン」 (2008年5月)(Library)

謎の連続殺人事件の現場には、いずれも不可解な記号が残されていた。 捜査が進むうち、インターネット上に書き込まれた処刑リストが浮上し、警視庁特命係の杉下右京と亀山薫は、次のターゲットが東京ビッグシティマラソンへと向けられているとにらむ。 真犯人の標的となった3万人のランナーと15万人の観衆を救うことはできるのか。 人気テレビドラマシリーズを経て映画化された「相棒―劇場版―」をノベライズ。 オリジナルストーリーも満載。

初心者の方が読んでもわかりやすいようにという配慮なのでしょうが、個人的にはNGでした……。 真犯人が○○という点も納得いかな〜い! 映画をそのままノベライズしたのでは意味がないのかもしれませんが、私としてはそちらを読みたかったです。 今作を先に読んで映画を観た方はびっくりするでしょうね。 好みの問題なので仕方ないかもしれませんが、私としては「残念です」としか言いようがありませんでした。

 

辻内智貴 (つじうち・ともき)

「帰郷」 (2006年3月)

亡くなった夫の故郷をひとり訪れる妻。 思い出の場所を歩きながら、ある人物を訪ねるが……(表題作「帰郷」)。 他、「花」「愚者一燈」収録の短編集。 坂本真典・写真。

やはり印象に残ったのは「帰郷」。 妻が知った夫の思い出の真相は、哀しいものでした。 確かに、ああいう少年時代を過ごせば、そういうこともあるかもしれないと思いました。 モノクロの写真が、とてもいいタイミングで挿入されていて、さらに郷愁を誘いました。

 

土屋隆夫 (つちや・たかお)

「人形が死んだ夜」 (2008年1月)

咲川紗江は、母・松代と甥・俊を連れて志木温泉へやってきた。 絵を描くのが大好きな俊は「いい場所を見つけた」と言って出かけていくが、そこで車に撥ねられて死亡してしまう。 目撃者・南原によると、犯人は白い車に乗った眼鏡の男ということだった。 警察はその証言をもとに捜査を進めるが、真犯人は見つからない。 自分で犯人を突き止める決心をした紗江は、南原に直接接触し、ある真相に辿り着くが……。 最初の長編「天狗の面」から50年を経て完成した書き下ろし長編。

意外な結末にびっくり。 結果的には、何も○○していないんですよね。 俊の轢き逃げ事件に関して、紗江は“そう”確信したし、たぶんそれが真相なのでしょうが、それは○○されていない。 南原の毒殺事件は真犯人が“そう”言っているので間違いありませんが、既に○○だし。 俊の○○も最後まで明かされないし。 土田警部が本当はどう思っていたのかも○のままだし。 でも、すっきりしないと言うより、余韻を残したエンディングと言えると思います。 土田の妻・信子の気持ちもわかりますが、個人的には紗江の信じたことを信じたいと思います。 それはたぶん間違っていることだとは理解しているつもりですが、心情的にはどうしてもそちらに傾いてしまいます。 紗江が手紙の中に書いた「人殺しが、どうして○○なのよ!」という言葉が頭から離れません。 ○○を果たしても気が済むわけではないのはわかります。 だって○んだ人は戻って来ないから。 でも、それならぶつけようのない怒りをどこへ向ければいいのか、という問いには誰も答えられないと思います。 そんな悲劇が起こらないことを願うばかりです。

 

筒井康隆 (つつい・やすたか)

「日本以外全部沈没 パニック短編集」 (2008年7月)(Library)

地球規模の地殻変動で、日本を除くほとんどの陸地が沈没してしまった。 各国の大物政治家や著名人たちが日本に押し寄せ、あの手この手で領土をねだったり日本語を学んだり。 生き残りをかけた世界のセレブたちに媚を売られ、すっかり舞い上がってしまった日本と日本人だが……(表題作「日本以外全部沈没」)。 全11編のパニック短編集。

今作に収録されているのは昭和37年から51年にかけて書かれたもので、平成20年現在に読むと、かなり“表現の自由”が許されているな、という感じでした。 今なら「これはちょっとまずいだろう……」というような表現がしばしば。 その分、分かり易いといえばそうだったかもしれませんが。 特に印象に残ったのは「人類の大不調和」。 最後の1行は……! それまでの流れもスゴイものでしたが、最後の最後に“こう”来るとは……。 「農協月へ行く」の最後の数行がスゴかった。 まあ、当事者ではないので笑って済ませられる問題ですが、○○に対してどういうイメージを持っているのか筒井さんにお伺いしたいくらいです(笑)。

 

恒川光太郎 (つねかわ・こうたろう)

「夜市」 (2006年1月)

大学二年生のいずみは、高校時代の同級生・祐司に誘われて、“夜市(よいち)”に出かける。 それは、不思議な場所で開催される、不思議な市場だった。 そこで祐司が探しているものとは……(第12回日本ホラー小説大賞受賞作「夜市」)。 他に、書き下ろし「風の古道」収録。

う〜ん、ホラーを読み慣れていないせいか、選考委員の方々がおっしゃる恒川さんの“素晴らしさ”が、私にはよくわかりませんでした。 面白くないとかつまらないとかいうつもりはありませんし、実際さくさく読み進められましたが、“老紳士”の正体はすぐにわかったし、“過去”に何があったのかも想像に難くはありませんでした。 どちらかと言えば、「風の古道」のほうが私の好みだったかも……。

 

「雷の季節の終わりに」 (2006年11)

現世とは隔てられて存在する小さな町・穏(おん)で暮らす少年・賢也はかつては姉と一緒に暮らしていた。 しかし、その姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。 それと同時に賢也は“風わいわい”という化け物に取り付かれてしまうが、それは周囲には秘密だった。 そんな中、ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を終われる羽目に。 “風わいわい”と共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは……。 ホラー大賞受賞後第一作。

基本的には、ホラー・SF・幻想・ファンタジーと称されるものは、苦手だし楽しみ方がわからないので手を出さないのですが、やはり訓練が足りなかったようです。 残念ながら、前作同様、恒川さんの良さを理解することはできませんでした。 面白くないとかつまらないとか言う以前に、よくわからないという感想です。 好みの問題なので仕方ありませんね……。 一番印象に残ったのは、リエが○んでしまうところ。 あまりにも呆気なくて呆然としてしまいました。 早田の正体も知りたかったな。 それまでの所業を考えれば、トバムネキは気の毒とは思いませんが、栄枯盛衰を感じました……。

 

津原泰水 (つはら・やすみ)

「ルピナス探偵団の当惑」 (2007年7月)(Library)

私立ルピナス学園高等部に通う吾魚彩子(あうお・さいこ)。 彼女の姉は刑事で、嫌がる妹に推理を強要する。 殺人現場で犯人はなぜ冷えたピザを食べたのか(「冷えたピザはいかが」)。 青薔薇の館に残されたダイイング・メッセージの意味は……(「ようこそ雪の館へ」)。 なぜ、舞台で死んだ大女優の右手が切断されたのか(「大女優の右手」)。 本格ミステリー3編を収録。

最初に書かれたのが10年以上前ということで、全面改稿の際にもあえて古い感じを残していますが、個人的にはそれが魅力的に映りました。 携帯電話やインターネットという単語が文中に出てこないのも、まったく気になりませんでした。 ものすごい速さで進歩しているものは、かえって登場しないほうがいつまで経っても読みやすいような気がします。 内容としては、彩子の姉・不二子にもっと登場して欲しいと思いました。 メインは彩子たち高校生なので仕方ありませんが、不二子の自由奔放(?)ぶりは見ていて楽しめます。 彩子にしてみれば「冗談じゃない!」というところでしょうけど(笑)。 事件の真相としては、一番印象に残ったのは「ようこそ雪の館へ」。 館へ辿り着くまでのエピソードも面白い。 祀島(しじま)くんも結構天然ですね(笑)。 今秋、シリーズ最新作として「ルピナス探偵団の憂愁」が刊行されるとのこと、こちらも楽しみです。

 

「ルピナス探偵団の憂愁」 (2008年2月)

高校時代、“ルピナス探偵団”としていくつかの事件に遭遇し、解決してきた彩子・キリエ・摩耶・龍彦。 卒業後、それぞれの道を歩んでいた4人だが、そのうちの一人が25歳という若さで世を去った。 久々に顔を合わせた3人に残されたのは、かの人が士を前にして百合樹(ユリノキ)の林に造らせた、奇妙な小道の謎だった―。 第一話「百合の木陰」から時を遡り、卒業式を前に殺人事件が起きたルピナス学園で彼らが受けた“祝福”を描く第四話「慈悲の花園」までを辿る。 「ミステリーズ!」連載の4編を大幅加筆修正。

25歳という若さで、○○が世を去ってしまうなんて……。 4人いてこそ“ルピナス探偵団”だと思っていたのに、なんだか寂しいです。 しかも隠された過去が知らされて、本人にとってはあまり本意ではなかったのではないでしょうか。 その代わりというか、今作は特に○○の活躍がフューチャーされていたような気もします。 一番印象に残ったのは第三話「初めての密室」。 真犯人の気持ちはわからなくはないですが、あまり共感できるものでもありませんでした。 “そういう”体験をしたことはないので、当事者の気持ちは想像することしかできませんが、やはりもっと他の方法で解決して欲しかったと思います。 最後の○○の言葉も印象的でした。 一人が亡くなってしまった以上、続編はあり得ないのかもしれませんが、○○と○○、○○○と○○がどう進展していくのかも見てみたい気がします。 雑誌掲載時の作品に大幅加筆修正となれば、「雑誌のほうも読んでおけばよかった」と思いました。

 

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