若竹七海 (わかたけ・ななみ)

「ぼくのミステリな日常」 (2005年9月)(Library)

私が思う“東京創元社”的な作品。 当然、私好み。 どっぷりハマリました。

ひとつだけ読んでもそれなりに楽しめますが、やはり通して読んで初めて良さがわかるというもの。 連作長編と書かれていますが、まさにその通り。 全部読まなきゃもったいないです。“日常の謎”的な内容ですが、殺人事件とかも起きて、結構キツイ部分も……。 全体的に、うっすらとした悲しみをまとっている感じがします。 「鬼」とか「吉凶春神籤」とか。若竹作品入門編としては最適。 これからどんどん読んでいきます。

 

「スクランブル」 (2005年9月)(Library)

15年前、とある名門私立女子高校で起きた殺人事件。 夏見たち文芸部の仲間の結婚式で、その真相に辿り着く。 と言っても、真犯人に確かめたわけではないので、その真相すら事実かどうかはわかりませんが。 “ああいう”結末は、好き嫌いがわかれると思いますが、私は結構平気でした。 それより問題は動機のほう。 真犯人すら定かではないので、動機も彼女たちの想像でしかありえないと思いますが、あれではちょっと……。 ありがちと言えばありがちですが、イマイチ共感できませんでした。

彼女たちの高校時代が1980年でほぼリアルタイムだし、私も公立ですが女子高に通っていたので、「わかるわかる」とか「あったわ〜」という記述がそこかしこに。 さすがにいじめみたいなものはありませんでしたが、“カーラーを巻いて授業を受ける”というのは笑っちゃいました。 文庫版の解説は佐々木譲さんでしたが、「あれは事実なのかギャグなのか」とおっしゃっていましたが、事実です(笑)。

 

「サンタクロースのせいにしよう」 (2005年9月)(Library)

「わたし」こと岡村柊子は、またまた登場する夏見の友人。 そのまた友人のお嬢様・松江銀子ととある事情で同居する。 その一軒家には、老婆の姿をした幽霊が……!? その正体やいかに。

全7編のうち、特に気になったのは「犬の足跡」。 でも、柊子の想像が真相なら、あまりにも悲しい出来事です。 「子どものけんか」も好きですが、ちょっと物足りない気もしました。 柊子と○○はどうなるのか、銀子の父親はどうなったのかなど、その後の話をもう1編読みたいです。

杉田比呂美さんの、ほんわかした表紙のイラストとは裏腹に、内容は結構キツイところが……。 人が○○だり、犬が○○○たり、近所に嫌なおばさんが住んでいたり。 でも、柊子にとって救いなのは、夏見というすてきな友人がいること。 ああいう関係は一生続くのでしょうね。

 

「製造迷夢」 (2005年9月)(Library)

渋谷猿楽町署の刑事・一条風太が、妹の友人・佐々木絵利子を通じて知り合った井伏美潮は、ある特殊な能力を持っていた。 それはリーディング能力もしくは過去透視能力、つまり、ものに触ると、そのものに残されている残留思念が“読める”というのだ。 その能力に助けれらながら、風太は事件を解決していく。 そして二人の関係は……。

お得意の連作短編形式の長編ですが、ほんわかした部分はほとんどなく、痛々しい事件ばかりでした。 中でも一番痛かったのが「光明凱歌」。 ああいう理由で無罪になるのはやっぱり解せません。

 

「クール・キャンデー」 (2005年9月)(Library)

祥伝社文庫15周年記念特別書き下ろし作品。 長すぎない短すぎない、読みやすい中篇。 

兄嫁を重態にしたストーカーが変死し、その殺人容疑をかけられた兄・良輔。 誕生日と夏休みを犠牲にして、兄の無実を証明しようと奔走する妹・渚。 人生最悪の夏を乗り切れるのか?

今まで読んだ若竹作品5作の中で一番好きかも。 読みやすい長さというのもありますが、1時間で読んじゃいました。最後の最後に明かされた真相にはびっくり! 当然と言えば当然の結末ですが、さらにその後が気になります……。

 

「プレゼント」 (2005年12)(Library)

職を転々とし、最も長く続いたのが興信所の調査員という女性・葉村晶。 娘に借りたピンクの子供用自転車で現場に駆けつける警部補・小林舜太郎。 二人が巻き込まれたハードボイルドで悲しい八つの事件とは……。 八つの短編は、晶・小林の順に登場し、最後に二人が接点を持つ。

とにかく“すごい!”の一言に尽きます。 何がどうすごいのかは、読んでみてのお楽しみですが(笑)。 内容もそうですが、文体や口調が、とてもぴりっとしていて読み易いです。 結構ブラックな表現もあって、それが笑いを誘ったりして、そこがまたいいんです。 最後の「トラブル・メイカー」が一番好きですが、晶が○ななくて本当によかった。 「実の姉がそんなことをするのか」と思うと気が滅入りますが、これからもがんばって生きていってほしいものです。

 

「依頼人は死んだ」 (2005年12)(Library)

長谷川探偵調査所で、フリーの女探偵として働くことになった晶。 大企業のOLから花屋に転身して成功を収め、現在では花屋・雑貨屋・ケーキ屋等を経営している女性実業家・松島詩織の依頼で、ストーカーと思われる人物からの嫌がらせから彼女を守ることになった晶が出会った人物とは……(「濃紺の悪魔」)。 全9編の連作短編からなる本書は、「プレゼント」に続く葉村晶シリーズ第2弾。

内容は、「プレゼント」以上に“怖さ”を増していて、よりシビアになっていると思います。 あまり笑えるところもなかったし。 特に、最後の「都合のいい地獄」は私にはホラーに感じました。 晶が、珠洲の○○の真相を知る日は来るのでしょうか。

初出を見て驚いたのは、出版社や掲載誌が多岐に亘っていること。 1編だけ読んでも、良さはわかりにくいと思うので……。 リアルタイムで雑誌を追いかけていた人は大変だったことでしょう。

 

「悪いうさぎ」 (2005年12)(Library)

フリーの女探偵・葉村晶は、家出中の女子高校生ミチルを連れ戻す仕事の最中、ナイフでわき腹を刺された上に足を骨折した。 その後、ミチルの友人・美和をも探すことに。 さらに他にも姿を消した少女がいることがわかり、真相を追う晶に魔の手が……。 晶は無事に事件を解決できるのか?

「なぜここまで!?」というほど、晶がひどい目に遭うので、読んでいてつらかったです。 少女失踪の真相はさらにひどいもので、真犯人は頭がおかしいとしか思えません。 「“悪いうさぎ”だと? あんたのほうがよっぽど悪いじゃん!」と言いたいです。 他にもひどいヤツがいて、同業者の世良は最悪です。 調査員としてというより、人間として間違ってます。 杉田比呂美さんのかわいいうさぎのイラストに魅かれて手にしたら、1行目からノックアウトです。

 

「海神(ネプチューン)の晩餐」 (2005年12)(Library)

1932年、氷川丸の一等船室から、タイタニック号沈没の際に持ち出された謎の原稿が盗まれた。 部屋の主は本山高一郎、通称・もとさん。 原稿に隠された暗号に気づいた高一郎の周りで、怪事件が多発する。 偶然乗り合わせた親友・牧野や、晩香波(バンクーバー)へ帰る日系二世・サラと共に、謎を解明しようと奔走するが……。

“航海中の船上で繰り広げられる本格長編ミステリー”、面白かったです。 「こいつが怪しい」というのは途中でわかりましたけど、その動機までは見抜けませんでした。 時代背景的に仕方ないのでしょうけど、なんとも哀しい結末でした。 エピローグがまた切ない。 まあ、それでこそ若竹作品とも言えますが……。 

 

「船上にて」 (2005年12)(Library)

紐育(ニューヨーク)から日本へ帰るのに、欧州経路の船旅を選んだ主人公は、船上でひとりの老紳士と知り合う。 その船には、老紳士の亡き妻の甥の孫という青年も乗り合わせていた。 彼が大事に持ち込んだのは、“ナポレオン三歳の時の頭蓋骨”。 それがなくなったから、さあ大変。 老紳士も、過去にダイヤモンドの原石を盗んだという濡れ衣を着せられていた。 両方の事件の真相は……?(「船上にて」) 他7編を含む短編集。

「船上にて」は、「海神の晩餐」を思わせる、船上モノ(?)。 長編でもいいような、内容の濃いものでした。 他の7編は、「船上にて」とは少しテイストが違いますが、どれも読みやすく、面白かったです。 一番好きなのは「手紙嫌い」。 主人公・志逗子がたどり着いた、祖父の死の真相はちょっとびっくりです。

 

「心のなかの冷たい何か」 (2005年12)(Library)

失業中、ふと思い立って箱根へ旅行することにしたわたしこと若竹七海。 旅先で知り合った一ノ瀬妙子は、不意の電話でクリスマス・イブの予約を取り付けたかと思うと、間もなく自殺を図り植物状態に。 そんな折、七海のもとに妙子からの『手記』が届く。 体当たりの探偵行の果てに、七海がたどり着いた真相とは……?

まんまと騙されました!(笑) 第1部の最後の最後まで、『手記』は………だと思ってました。 そんなの私だけ? 毒の話や、ビールにポ○リスエットの粉を入れると云々など、「こんなこと書いちゃっていいの?」と思うような記述が結構あって、ちょっとひやひやしました。 キョウチクトウは、私も好きな花なので、さらにショック。 「ぼくのミステリな日常」と違って、今回は、七海が晶にダブって見えちゃいました。 クリスマスに読むには、時期的には最適ですが、内容はちょっとイタイかも……。

 

「遺品」 (2006年1月)(Library)

三十数年前に亡くなった、女優でもあり作家でもある曾根繭子。 彼女にまつわるコレクションが、金沢のホテルに眠っていた。 大林一郎が収集したそのコレクションを公開する作業が進められる中、彼の異様なまでの執着ぶりが明らかになる。 作業をするのは女性学芸員の“わたし”と、ホテル従業員で助手のタケル。 やがてホテルには、繭子が書き残した戯曲を実演するかのような出来事が次々と起こる。 その結末は……? 書き下ろし本格長編ホラー。

“わたし”は、まるで晶のように、困難に立ち向かう勇気のある、芯の通った女性。 辛い過去を抱えつつも、自分の選んだ道を進んでいく。 なのに、このエンディングはあまりにも残酷……。 タケルの○が勝つと思っていたのに、まさかそうなってしまうとは。 現実には、○はすべてを変えるなんてとても言えないけど、せめてフィクションの中では、そうなって欲しかったです。 まあ、そうならないところが、この作品が若竹作品ある所以かもしれないのだけれど。

 

「ヴィラ・マグノリアの殺人」 (2006年1)(Library)

神奈川県葉崎市にある、海を臨む全10棟のヴィラ・マグノリア。 その空き家になっている1棟で、死体が発見された。 被害者は? 犯人は? 捜査が手間取るうちに、第二の殺人事件が発生。 ヴィラの住人が真犯人の連続殺人事件なのか? 捜査を進めるうちに、住人たちの素顔も明らかになっていく―。

若竹さんお得意のコージー・ミステリー。 お芝居を観ているような感覚で、さくさく読み進められました。 実際、舞台に乗せたら楽しめるだろうな、と思います。 ふたつの事件の真相も、気の毒と言えば気の毒だし、自業自得と言えばそうだし。 共感できるかと言えば、できるようなできないような……。 なんにしても、松村朱実のような人が自分の周りにいたら、ましてやそれが家族だったとしたら、と考えただけでもぞっとします。

 

「名探偵は密航中」 (2006年2月)(Library)

昭和5年7月、豪華客船・箱根丸は倫敦へ向けて横濱港を出港した。 その船上には殺人事件の容疑者が乗船していたり、男爵令嬢が逃亡しようとしたり、幽霊船が出現したり、奇妙な事件が数々起こる。 それぞれの謎を解くのは、じゃじゃ馬令嬢であったり、○○中の僧侶であったり。 ミステリーの楽しみがぎゅっと詰まった、傑作オムニバス・ストーリー。

第4話「名探偵は密航中」に登場する、三蔵和尚の謎解きはお見事。 とある事情で、ここにしか登場しないのが本当に残念。 自分のことよりも、裕子や初子のことを考えて船長に進言してくれた気持ちが、粋に思えました。 まあ、ある間違いをしていたのだから、自分のためでもあったのでしょうけど(笑)。 第5話「幽霊船出現」も、これだけで楽しめるミステリーでした。 ある海外の女流作家の、ある短編作品を思い出させるエンディングでした。

 

「古書店アゼリアの死体」 (2006年2月)(Library)

勤め先が倒産、泊まったホテルが火事、怪しげな新興宗教に追いかけられ……。 不幸のドン底にいた相澤真琴は、葉崎市の海岸でさらに不幸な目に遭うことに。 運良く古書店アゼリアの店番にありつくが、そこにもさらなる不幸が待ち受けていた。 真琴に、平穏な日々は訪れるのか。 葉崎コージー・ミステリー第2弾。

葉村晶とどっこいどっこいなほどの気の毒な目に遭う相澤真琴。 これだけの目に遭ったら、「どうして私がこんな目に!?」と叫びたくなるのは当然です。 とりあえず事件は無事解決したし、ロマンス小説専門古書店の店番らしく(笑)、ロマンスっぽいエンディングを迎えているので、まあよかったかな、と。 真相は、明かされるだけがハッピーエンドではないということも、改めて思い知りました。 第3弾「ホテル・カトレアの醜聞」(仮)の予定と構想がある(by 「このミス2002年版」)そうですが、ぜひ実現してほしいと思います。

 

「死んでも治らない 大道寺圭の事件簿」 (2006年2月)(Library)

大道寺圭は、元警察官の物書き。 警察時代に出会ったまぬけな犯罪者たちをネタに、1冊の本「死んでも治らない」を上梓したのだ。 それが呼び水となり、さらなるまぬけな犯罪者たちにつきまとわれて、大道寺は数々の珍事件・怪事件に巻き込まれていく。 深い余韻の残る、コージー・ハードボイルド。

5つの短編の中で、「あれっ」と思ったのは「泥棒の逆恨み」を読んだとき。 これって、「不条理な殺人」(祥伝社文庫)に収録されている「泥棒稼業」に出てくる二人ですよね。 こんなところにもリンクが! それよりも、この二人の正体を知ってびっくり! まさか、○○だったなんて……。 一番好きなのは「死んでも治らない」。 私のツボの○○がテーマなので。 確かに、○○はわりにあわないかもしれないし、人生の無駄遣いかもしれないし、正義でもなんでもないかもしれません。でも、それでも○○したくなる気持ちはわかるつもりです。 大道寺圭の著作「死んでも治らない」「殺しても死なない」も、ぜひ読んでみたいと思いました。 

 

「閉ざされた夏」 (2006年2月)(Library)

新国市に生きた天才作家・高岩青十。 その旧邸と庭園は高岩公園として一般に公開され、資料を展示公開する記念館も隣接されている。 その文学記念館で、奇妙な放火事件が相次いで発生した。 さらには職員が他殺体で発見される。 新入り嘱託学芸員の佐島才蔵は、作家の妹・楓とともに、事件の謎を解き始めるが……。

一連の事件の真相は、なんともやりきれませんでした。 最後に明かされる真犯人や事件の経緯は、「どうしてそんなことに……」と言うしかない出来事で、○○が自供をしたのもそれをわかってのことだと思うと、「だったらなぜ○○なんて」と残念で仕方がありません。 才蔵が次の職場でがんばることを祈るのみです。

 

「八月の降霊会」 (2006年2月)(Library)

小説家・南澤秀子のもとに<降霊会のお知らせ>という手紙が届き、助手の渡部司はそれに同行するように命じられた。 同じ手紙が、霊媒師母娘・真名木美鶴といずみ、誘拐犯の娘・田中逸子、さらには百貨店社長・安達優三郎のもとにも届いていた。 招待主・水屋征児の意図とは……。 サスペンスフル本格ミステリー。

○んでも仕方のない自業自得の人もいれば、巻き込まれて気の毒な人もいました。 エンディングは、「そんな……!」というほど哀しいものでしたが、いずみが○を覚えていてあげて欲しいと思いました。

 

「猫島ハウスの騒動」 (2006年8月)(Library)

葉崎半島の先にある、通称・猫島。 そこには約30人の人間と、100匹を超える猫たちが住んでいる。 夏休み、高校生の菅野虎鉄はナンパした女性と<猫のため息>入り江へ行き、そこでナイフを刺された猫の死体(と思しきもの)を発見。 夏期臨時派出所に居合わせた駒持警部補が捜査に携わることに。 さらに、マリンバイクの事故で人が死ぬ、改装中の家のゴミ置き場で死体が見つかる、台風が来て島は孤立する。 虎鉄の同級生・杉浦響子の家でもある洋風民宿・猫島ハウスを巻き込んで、事件は解決に向かうが……。 葉崎コージー・ミステリー第3弾。

当然と言えば当然ですが、事件解明のヒントはあちこちに散らばっていて、それを掬いながら読むのは楽しいものです。 たとえ、そのときには気づかなくて、解明されていく段階で「ああ、あれがそうだったのか!」と思うとしても(笑)。 前2作よりは、読んでいて胸が痛くなるようなことはありませんでした。 猫を捨てに来る人間が多いということ以外は……。 含みを持たせたエンディングで、さらなる新刊も期待できそうです。 駒持と一緒に捜査に携わる警察官の苗字に、必ず○○が含まれているのは意図されたことなのでしょうか>若竹先生。 それにしても、駒持が○アレルギーだとは知りませんでした(笑)。 この島、猫好きの人間にとっては楽園でしょうねえ。 私はどちらかと言うと犬派ですが、猫島にはぜひ行ってみたいです。

 

「火天風神」 (2006年8月)(Library)

最大瞬間風速70メートル超の大型台風が三浦半島を直撃! 半島にぽつんと建つリゾートマンションは、電話も電気も不通、陸路も遮断され、孤立状態に。 しかも、火事は起きるわ、空き室から死体が見つかるわ……。 十数人の滞在客たちは恐怖と絶望のどん底に突き落とされる。 謎とサスペンスに満ちた傑作パニック小説。

何が一番怖いって、台風や火事や停電より○○人ですよ! あんなヤツが身近にいたら生きた心地もしませんって。 怖いというより、ムカツク。 信じられない。 他に、竹○もちょっとどうかと思いますね。 一瞬いいヤツかと思ったらそうでもないし。 極限状態とも言える状況に陥って、まともでいるほうが至難の技なのかもしれませんが、あまりにもひどすぎます。 人間不信になりますよ……。 摩矢は、○が○こえないのによくがんばった! 翔子は、○○人に何度も○われながら、よく逃げ切った! 自分が同性だからかもしれませんが、女性のがんばりに目が行っちゃいました。 聡は、がんばって○○○○官になって欲しいものです。

 

「親切なおばけ」 (2006年12)(Library)

近所の人から“おばけやしき”と呼ばれるほど古い家に住んでいるノノコちゃん。 「おばけやしきに住んでいるからおまえはおばけだ!」と言われ、近所の子どもたちにも遊んでもらえずいつもひとりぼっち。 そんなノノコちゃんにおじいさんは「おばけでいるのが好きなら、いいおばけにならないとね」と諭します。 ノノコちゃんは、親切なおばけになれるかな。 作/若竹七海・絵/杉田比呂美という最強タッグによる絵本。

杉田比呂美さんのイラストは本当に素敵ですね。  まず表紙から素敵、色使いも素敵。 もちろん、若竹さんの文も素敵ですけど。 ノノコちゃんが仲間はずれにされるのは嫌だけど、「あたしひとりだけおばけ」という前向きな発想が可愛らしいです。 おじいちゃんのいいつけを守って、“親切なおばけ”になろうとするあまり、あんなことやこんなことを引き起こして、挙げ句の果てに……、というのはちょっと笑えます。 ノノコちゃんが“親切な女の子”“親切な大人”になっていく様子も見てみたいです。

 

「信じたければ〜殺人熊書店の事件簿1〜」 (2007年2月)(Library)

吉祥寺にあるミステリ専門店Murder Bear Bookshop−日本名・殺人熊書店―で、店主の富山と最近雇われた新人、常連客の栗山保や土橋譲吉、加賀見聡志らが集う中、雑誌編集者・彦坂夏実がやってきた。 御子柴大三郎“大先生”に書評を書いてもらう本を選びに来たのだが……。 吉祥寺にあるミステリ専門書店TRICK+TRAP2007212日閉店)で限定40部のみ発売された超貴重私家版。

すてき! 面白い! 「これぞ若竹七海!」という感じ。 一行一行、一言一句が面白い。 どこがどういい、というより全部ひっくるめて若竹作品という内容で、これが私家版なんてもったいないです。 まんまと騙された私は、3回読み返しました。 “1”となっているからにはぜひ続編を! 若竹さんは「シャレでつけたのよ。 TRICK+TRAPはなくなっちゃうし」とおっしゃっていましたが、ネット書店として活動する予定、しかも一般の書店にはない本を提供したい、というコンセプトであれば、ぜひ続編をお願いしたいです。 ネット上で購入希望者を募ってそれから価格を設定するという形でもいいし、価格はいくらで限定何名という形でもいいし。 ファンとしては、一人でも多くの人が作品を読めるようにして欲しいと思います。 もちろん、若竹さんや戸川さんにメリットがある範囲で。 お手伝いできるものなら何かしたいくらいです。 (あまり本を読んだ感想にはなっていませんね……。)

 

「バベル島」 (2008)(Library)

イギリス・ウェールズ北西部。 この地の伯爵であるジェイムズ・アルフォンスは、幼い頃からある夢に取り憑かれれていた。 それは、「バベルの塔」を建設することだった。 60年の歳月をかけ、塔は完成の日を迎えるが……(表題作「バベル島」)。 ビルの25階のオフィスで残業をしていた兼田将彦は、急停止したエレベーターに閉じ込められてしまう。 その中には髪の長い女も一緒に乗っていたが、このビルには幽霊が出るという噂があり……(「上下する地獄」)。 幾種類もの“怖さ”が詰まった、単行本未収録全11編の短編集。

待ちに待った短編集。 嬉しいです。 2006年8月5日、TRICK+TRAPで開催された「猫島ハウスの騒動」のサイン会の折、“書庫の部屋”のなかはしさんが「短編集をぜひ!」とお願いしていましたが、その場にいたのは光文社の編集者の方(と思しき男性)。 「願いが聞き届けられたのね!」と大感激です。 今作はホラー系でしたが、別のジャンルでもお願いしたいです。 「バベル島」と「人柱」には、意外な人物が登場していてこれまたびっくり。 そちらのシリーズもまた読みたいです。

内容としては、どれも「ザ・若竹作品」という感じで楽しめました。 既読は「白い顔」と「上下する地獄」のみで、ほとんどが初読だったのでよけいに楽しかったです。 どれもそれぞれに「怖っ!」とか「あり得そう……」とか、ゾッとするものでしたが、特に印象に残ったのは「のぞき梅」。 「○○○じゃ〜」というわけではありませんが、あり得そうな話です。 偶然といえばそれまでですが、○○○のようなものはあると思っています。 梅が恐くなりそう……。 「白い顔」「人柱」「上下するエレベーター」が、“あんな”ふうに繫がっているのが面白かったです。 若竹さんもしくは編集さんが“ああいう”ふうに並べたのでしょうか。 読んでいてゾクゾクしました。

 

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