横溝正史 (よこみぞ・せいし)

「犬神家の一族」 (2006年12)(Library)

信州のとある財閥の創始者・犬神佐兵衛が永眠した。 遺言状は親族がすべて揃ってから開封することになっている。 孫の一人・佐清(すけきよ)が復員し、遺言状を開封することに。 その内容が不吉な争いの元凶になることを恐れた弁護士・若林は、東京の探偵・金田一耕助に協力を依頼する。 だが、その彼自身が殺人事件の第一の被害者となる。 その後、凄惨な殺人事件が次々と起こる。 これら悲劇の真相は……。 日本推理史上、普及の名作。

“あの人”と“あの人”の正体はわかりやすかったですが、もう少し血腥い内容でもよかったかも、と思いました。 殺人事件の真犯人の動機は、個人的にはイマイチでした。 だったらやはり、“あの人”がかつての仕打ちに対する○○をする、というほうが私の好みだったのに。 ラストは原作のほうが断然よかったです。 真犯人も人の○だなあ、というのがよく描かれていたと思います。 巨額の財産や巨大な権力は人を惑わせてしまうもののようですが、自分には縁がなくてよかった。 と言うのは負け惜しみ?(笑)

 

横山秀夫 (よこやま・ひでお)

「震度0」  (2005年9月)

神戸で未曾有の大震災が起きたその日、N県警の警務課長・不破が失踪した。 真相を解明しようとする幹部たち。 しかし、その中で本当に不破の安否を気遣っているのは警備部長・堀川ただ一人だった。 本部長・椎野、警務部長・冬木のキャリア組と、刑事部長・藤巻、生活安全部長・倉本、交通部長・間宮の地元ノンキャリア組。 前者と後者の腹の探りあい・対抗のみならず、前者内・後者内でもそれが行われる。 手持ちのカードをいかに有効に使うか。 お互いが譲らず、自分が場を統括したがっている。 しかも、それぞれ自分の立場を優位に、護ろうとしながら。

残念だったのは、捜査の現場を取り仕切る藤巻が、退官後の再就職先確保に回ってしまったこと。 後進のためにも、というのは建て前で、本音は自分の安定した生活を手放したくないというだけにすぎない。 一番のろくでなしは倉本。 こいつさえいなければ、不破が失踪することもなかったはずだと思うと悔しい。 間宮も同格。 失踪の真相はあまりに悲しく、ああするしかなかった○○の気持ちはわかるような気がします。 それにしても、現場が靴をすり減らして捜査している間、トップがあんなふうに駆け引きをしているのは事実なのでしょうか。 確かに、幹部には幹部の苦悩があるのかもしれませんが、自分の立場を有利にすることしか考えていないなんて。  作品全体の雰囲気が「半落ち」に似ているような気がしたのは私だけでしょうか……。

 

吉田修一 (よしだ・しゅういち)

「悪人」 (2007年8月)

保険外交員・佳乃が殺された。 捜査線上に浮かんだのは男子大学生・増尾。 なぜ佳乃は殺されたのか。 真犯人は本当に増尾なのか。 朝日新聞に約10ヶ月に亘って連載された長編。

殺人事件が起きると、犯人逮捕に繋がるという名目で被害者の人となりがテレビや新聞で報道されることがよくありますが、「こういう人なら殺されても仕方ないかも」と思わせるような報道の仕方をすることも間々あって、それはどうかと常々思っていました。 今作で、佳乃は携帯の出会い系サイトを利用していたり、売春のようなことをしていたと報道され、それを見た何の関係もない一般市民が佳乃の実家へ嫌がらせをしますが、そういう人たちも“悪人”だと思います。 被害者遺族に嫌がらせをして何が楽しいのでしょうか。 自分がそれを受ける立場だったらとは考えないのでしょうか。 今回、佳乃に何の落ち度もなかったとは言いませんが、無関係な人間が嫌がらせをしていい理由にはなりません。 今作で、一番の“悪人”は○○だと思います。 佳乃の父親・佳男が○○を○してやりたいと思うのも当然です。 ○○は○す価値もないやつだと思うので、結果的にはそんなことをしないでよかったと思いますが、○○にはいつか佳男の気持がわかるようになって欲しいと思います。 でなければ、同じようなことを繰り返していつか誰かに○される羽目になるでしょう。 光代には、裕一の優しさを信じて欲しいと思いました。 待っていてあげて欲しいとは言えませんし、過去は忘れて幸せを掴んで欲しいとも思いますが、あの時間は嘘ではなかったとわかって欲しいと思います。

 

吉田親司 (よしだ・ちかし)

「WW 記憶師たちの黄昏」 (2005年11)(Library)

最凶最悪の双子の美少女VS記憶師・美砂萌恵。 死線の境界で繰り広げられるハイテンスサイバーアクション。 いわゆるラノベです。 前作「MM 記憶師たちの夜明け」の後日談。 こちらの主人公は摩周美冴・誠人親子。 彼らは“記憶師”で、その仕事は、特殊な技能を駆使し、人の記憶を改竄すること。 三人の運命はいかに……?

吉田親司さんは、本職(?)は架空戦記作家さん。 なので、銃とか戦車とか、ばんばん出てきます。 しかもラノベなので、男子中高生向きな感じ。 内容に関する感想がイマイチうまく書けませんが、テレビアニメとかで観たら面白そうです。

 

「マザーズ・タワー」 (2008)(Library)

西暦2038年、難病の子供たちの末期医療に従事していた《マザーズ教団》は、インド州軍の襲撃を予測し、拠点としていたスリランカとインドを結ぶ巨橋“BB”を崩壊させ、教団ごと非難する決意をする。 攻撃開始の日、それぞれの理由で居合わせた4人の男たちは、教団代表・葵飛巫子の素顔と人類の未来を左右する真の目的を知り、彼女のために命と才覚の全てを賭け、太陽系最大の建造物・軌道エレベータの建造に挑むが―。

個人的にはなじみの薄い本格SFということで、読むのに時間がかかってしまいましたが、いろいろ勉強になりました。 西暦2038年と言えば、もうたった30年後の話。 軌道エレベータが必要な環境になっていなければいい、というのが正直なところです。 内容としては、4人の男たちが○んでしまったことが残念でした。 ひとりずつ順番に、それぞれに合った○に方だったり不似合いな○に方だったり。 思わず涙が……。 いつの時代も人の心を動かすものは“こういう”ことなのかなあ、としみじみ感じました。 世の中の環境が良くなっても悪くなっても、永久不変なものはあるんだなあ、と。 彼らのおかげで人類は助かるわけですが、この終わり方なら彼らの○○もあり得るはず。 そうでなければ報われません(笑)。 飛巫子が○きているうちに、ぜひ続編を。

 

吉野万理子 (よしの・まりこ)

「秋の大三角」 (2006年2月)

横浜・元町にある中高一貫の女子校、通称“ツタの学園”で、演劇部に所属している中二の里沙は、以前電車の中で助けられたことから、バスケ部の高二の先輩・真央に好意を抱いている。 真央の姉・詩央は演劇部のOBで、彼女が部に寄付したネックレスに関して、真央からあることを頼まれた里沙は……。 そのネックレスは、謎の青年・香司とどう関係しているのか。 女子校を舞台に展開する、学園ファンタジー。

すべては、そうなるべくしてなった、というのが結論。 里沙が真央の手伝いをしたのも、詩央が○○から逃げ出したのも、真央が○○を好きになったのも。 ただ、香司の“正体”は、そういうことだとは思いませんでした。 最後に、真央がああいう決断をしたのも、ちょっと残念です。 横浜には、本当に“そういう”場所があるのでしょうか……。

 

「雨のち晴れ、ところにより虹」 (2006年9月)

喧嘩中の渉(しょう)と美也子は、渉の父・勝弘にスーパーの一角に呼び出され……(「なぎさ通りで待ち合わせ」)。 高校三年生の優花の母・多香子は予備校の人気講師だが、優花の進学を機にあることを実行しようとしている(「こころ三部咲き」)。 情報誌編集部でデスクを務める由衣は、部下の女性からパワーハラスメントで訴えられ……(「ガッツ厄年」)。 余生をホスピスで過ごす須藤は、小学時代の同級生・アヤのことを思い出していた(表題作「雨のち晴れ、ところにより虹」)。 海をこよなく愛する祖父に、将来の夢をなかなか語れない雄貴だったが……(「ブルーホール」)。 佳苗は、大学時代の親友・佐和子の結婚式で、知らなかったことを知り、忘れていた大事なことを思い出す(「幸せの青いハンカチ」)。 湘南を舞台に描かれる、6つの短編集。

特に連作になっているわけではなく、「なぎさ〜」だけを読んでもなんの支障もありませんが、「幸せの〜」を読む前には「雨のち〜」を読んでいたほうが絶対いい、と思います。 要するに、収録順に収録作を全部読んだほうがいい、ということです。 どれも素敵ですが、特に印象に残ったのは「こころ〜」と「雨のち〜」。 前者は、母子家庭で育つ優花の心情が手に取るようにわかり、最後に母の決心を知ったときの優花の答えは「まっすぐに生きてきた証拠だなあ」と思いました。 後者は、ホスピスという場所でなければできないこと、気付かないことがあるということを痛感させられました。 「幸せの〜」で、須藤が“ああいう”形で登場したのは、わかっていても残念でした……。

 

「ドラマデイズ」 (2007年4月)

丸の内でデータ入力の仕事をしているOL・茉由子。 テレビのシナリオコンクールに応募を始めて5年。 やっと佳作を受賞し、順風満帆なライター生活を始められると思いきや……。 

まず感じたのは「茉由子はいいなあ」ということ。 個人的にはデータ入力なんて願ってもない仕事ですが、6年もやっていると嫌気が差すものなのでしょうか。 私が代わりたいです(笑)。 しかも「脚本家になりたい」という夢まである。 ほんと、羨ましいです。 年齢的な問題もありますが、やりたいことがあり、それができるというのは羨ましいです。 まあ、その夢は順風満帆では全然なくて、それどころか職場でも何やら微妙な立場になってしまい、気の毒な面も多々ありますが。 茉由子が(私も)学んだのは“人は見かけによらない”ということでしょうか。 いい人そうに見えても実は腹黒かったり、嫌な奴と思っていたら実はまともな人だったり。 人はいろいろな側面を持っていて、見方によってはいい人だったりそうじゃなかったり、見る人によってよく見えたりそうじゃなかったり。 人間関係は難しいですね。 残念だったのは稲葉の態度。 茉由子に声を掛けて拾い上げてくれたのはよかったけど、秋月との件ではもう少し違う態度を期待していました。 その俳優は一人しかいないけど、ライターの卵なんて掃いて捨てるほどいる、ということでしょうか。 もちろん、約束を破った茉由子もいけないと思いますが、荻間のやり方はきたないですね。 そんな奴らには負けずに、「ドラマデイズ」を書き上げて欲しいと思います。 続編希望!

 

「ROUTE 134」 (2007年9月)

委託で雑誌編集の仕事をしている悠里は、イラストレーター・間中との打ち合わせのために、南葉山へやってきた。 そこは、彼女が中学時代を過ごした町だが、苦い思い出の残る場所でもあった―。

18年前、中学時代にふとしたことから○○○に遭ってしまった悠里。 その原因とも言える人物との再会。 う〜ん、ドラマですねえ。 子供の頃にはわからないことも、大人になれば見えることがあると思いますが、“時既に遅し”にならなくてよかったです。 もちろん、18年の歳月が流れたからこそわかったことかもしれませんが、それが無駄にならなくて本当によかったです。 かつて、夏輝が悠里に“あんな”言い方をしたのは、やはり自分の信じた相手が“そんなこと”をするなんて、という気持ちもあったのでしょう。 実際、悠里にも落ち度はあるわけで、もう一人の人物を責めることばかりはできないと思いますが、やはりその人物にも悪気はあったわけで、それが○○○と関わっているとなると、子供の世界とはいえ「怖いなあ」と思います。 でも、過去は過去。 やり直せるなら今度は間違いや失敗のないよう、お互いを大事にして欲しいと思いました。 ちなみに、私が杉山清貴&オメガトライブの歌で一番好きなのは「君のハートはマリンブルー」です。 ファーストアルバム、よかったなあ。

 

米澤穂信 (よねざわ・ほのぶ)

「夏期限定トロピカルパフェ事件」 (2006年4月)(Library)

恋愛関係にも依存関係にもない、互恵関係を保つ高校二年生の二人・小鳩常悟朗と小佐内ゆき。 夏休みに示し合わせて会うようなことはなかった。 少なくとも去年は。 なのに今年、常悟朗はゆきに<小佐内スイーツセレクション・夏>なる企画に参加させられることに。 それは、市内の美味しいスイーツの食べ歩きではあるが、なぜ自分が付き合わなければならないのかまったく理解できない。 そうこうするうちに、ゆきがある事件に巻き込まれて……。 常悟朗は、真相を見破ることができるのか。

なんか、すごい展開になってます! 前作「春期限定いちごタルト事件」に比べると、格段に事件性が高くなってます! だって、普段の生活の中で、○○ッ○とか○○とか○○とか、身近に存在するとは思えないじゃありませんか。 実際、それらで苦しんでいる人たちがいることはわかりますが、自分自身に置き換えても、想像できません。 しかも、あのゆきが、小柄で小学生にすら見えなくもないゆきが、そんなことに巻き込まれるなんて。 しかも、○○したのが他ならぬゆき自身なんて。 もちろん、自分の身を守るためというのは分かりますが、ある意味恐ろしい……。 普通の女子高生が考え付くことなのでしょうか。 常悟朗とゆきの関係はどうなってしまうのでしょう。 続編はいつ? 「秋期限定モンブラン事件」とか「冬期限定アップルパイ事件」とか。 純粋な<小佐内スイーツコレクション・夏>にはぜひ参加したいです! 一番食べたいのは宇治金時。 夏期限定トロピカルパフェはたぶん無理です(笑)。

 

「インシテミル」 (2007年10)

コンビニでアルバイト情報誌を立ち読みしていた結城理久彦(ゆうき・りくひこ)。 車が欲しいと思っていた彼は、いい仕事がないかとぱらぱらと雑誌をめくっていた。 そこへ、明らかに住む世界が違うと思われる少女が声をかけてきた。 その場はそれで終わったが、怪しげな実験モニターの被験者として再び出会うことになる。 しかし、その“館”はあまりにも奇妙で……。

これを読んで実感したことは「うまい話には裏がある」ということ。 何があってもこんなバイトはしない、と誓いました(笑)。 館モノを好んで読むほうではありませんが、既読の数作を思い浮かべるような内容でした。 館の形状とか、○○のルールとか。 だからといって、今作が面白くないとか二番煎じとかいうわけではありません。 充分楽しめました。 ○人が起きるのに、楽しめるというのは語弊があるかもしれませんが。 閉鎖空間では(現実社会でもそうですが)、ある程度の人数が集まれば「自分だけがしっかりしていれば大丈夫」というわけにはいかないので、平静を保つというのは難しいですね。 この館内でもそうですが、理久彦はとてもがんばりました。 祥子から○○状が届きましたが、彼は参加するのでしょうか……。

 

「遠まわりする雛」 (2007年11)

神山高校で噂される怪談話(「やるべきことなら手短に」)、放課後の教室に流れてきた奇妙な校内放送(「心あたりのある者は」)、摩耶花が里志のために作ったチョコレートの消失事件(「手作りチョコレート事件」)など、奉太郎たち古典部のメンバーが入部直後から春休みまでに遭遇する謎を描いた全7編の短編集。

米澤作品の中で一番好きなのが古典部シリーズです。 今作でも、奉太郎やえるが大活躍です。 その分、摩耶花と里志の出番が少なかったような気もしましたが。 一番印象に残ったのは表題作でもある「遠まわりする雛」。 えるのきっての頼みで、彼女の地元で開催される“生き雛祭り”に参加することになった奉太郎、「ここを渡ってください」と言われた橋が通行止になっていて……という内容ですが、謎や謎解きもさることながら、終盤が特にいいですねえ。 奉太郎の可愛い一面が覗けて、微笑んでしまいます。 シリーズはこのまま終わりなのでしょうか? 余韻を持たせたエンディングで終わるのもいいですが、彼らの大学時代や社会人になってからの生活も覗いてみたい気もします。

 

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