結城五郎 (ゆうき・ごろう)

「殉愛」 (2006年3月)

矢田由里子は、父・晴康が入院する病院で、主治医の長谷純と出会った。 公認会計士・大倉という婚約者があり、4ヵ月後には挙式が決まっていたが、彼の不誠実な態度に愛情が崩れていった。 純に対する自分の気持ちを認識した由里子は、式の前日に純のもとへ走った。 二人は結婚し、純の仕事も順調に思えたが、大倉の執念が影となって立ちはだかった。 純と由里子は幸せを取り戻すことができるのか。 「樹の海」に続く書下ろし長編。

どんな面でも裏と表があり、片方から見たのではわからないことや間違うこともあると思いますが、この場合もそうで、純と由里子の側から見れば大倉は偏執狂のようですが、大倉側から言わせれば、純は婚約者を奪った憎い敵ということになるのでしょう。 大倉側の視点で作品を書けば、また違った内容になると思います。 ただ、やはり愛想を尽かされるのには理由があって、医者という職業上とは言え、自分の身内を親身になって診てくれた人物に対して尊大で不誠実な態度を取るような人間に、愛情を感じろと言うほうが難しいと思います。 大倉は、出会った頃から計算すると25年間も由里子を思い続けたようですが、最初は愛情だったかもしれませんが、いつからかただの執念になっていたように思います。 それも愛情のひとつと言えなくもないと思いますが、少し歪んだ形であることは間違いありません。 純は、尊敬する医師や優しい看護師に恵まれ、ある意味幸せな人生を送ったと言えますが、自分で選んだ道とは言え、由里子と離れていた時間の長さは気の毒だと思います。

 

「サイレント・キラー」 (2008)

医師・楠木真史が忽然といなくなった。 そして、その妻・志乃までも。 志乃の弟で、やはり医師の福本耕平は、真史の父で同じく医師の忠直や、その患者であり元警部補の角田らとともに、ふたりの行方を追うが……。 書き下ろし長篇医療ミステリー。

病院を舞台にした犯罪で、こんなことが実際にあったらと思うとゾッとしますが、あり得ないとは言い切れないところが恐ろしいです。 ○○が悪い人でなかったことにはホッとしましたが、あまり救いのある結末ではありませんでした。 自分たちの悪事を隠すためには簡単に人を○してしまう人間がいるというのも考えたくない話です。 こんなにもたくさんの人が○されてしまう内容だったことは残念ですが、ひとつ間違えば自分自身も被害者にも加害者にもなってしまうのだということを改めて実感しました。 “こんな”ことのない世の中になればいいのに……。

 

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