アンソロジー

「競作 五十円玉二十枚の謎」 (2005年10)(Library)

若竹七海さんが、学生時代のアルバイト先の書店で遭遇した謎を問題編とし、それに対する解答編を収録したもの。

毎週土曜の夕方、五十円玉二十枚を握り締めて、両替を依頼する中年男。 その行動の意味するところとは?

一般公募作品を掲載しているというところが、すごいです。 しかも、その中には倉知淳さんが。 猫丸先輩が登場します。一番好きなのは、有栖川さんの『老紳士は何故……?』です。 両替の理由も納得できたし、最後のオチも面白かったです。

当然のことながら、“こうではないか”という想像ができるだけで、結果的には問題は解決しません。 でも、これだけ多くの可能性があるかと思うと、若竹さんのみならず、私を含める読者も真相が気になって仕方ないでしょう。

 

「ミステリ・アンソロジーX 血文字パズル」 (2006年3月)(Library)

火村と有栖が、被害者が残したダイイング・メッセージの謎を解く(「砕けた叫び」)。 安楽椅子探偵・デュパン鮎子とその孫・奈緒が、“風の街”で起きた事件の謎を解く(「八神翁の遺産」)。 稀代の銘探偵・メルカトル鮎が“5秒で解決できる事件”を解くために仕掛けた趣向とは……(「氷山の一角」)。 渚が、誕生日に出会った青年と過ごすうちに気づいた10年前のある事件の真相とは……(「みたびのサマータイム」)。 豪華書き下ろしアンソロジー。

とにかく、若竹さんの「みたびのサマータイム」が読みたくて購入。 これは、「クールキャンデー」(祥伝社文庫)の続編で、「青に捧げる悪夢」(角川書店)にも収録されています。 もう最高! 良輔にそんな過去があったなんて。 真相は哀しいものでしたが、渚にも春がやってきたようで一安心。 やっぱり若竹さんはすごいです。 特にコメントはしませんが、他の3作もそれぞれ秀作でした。 

 

「不透明な殺人」 (2006年4月)(Library)

10人の作家さんの短編が収録されたミステリー・アンソロジー。 初出はすべて月刊「小説non」(祥伝社)。

特に印象に残ったのは次の4作品。 「複雑な遺贈」(姉小路祐)は、体を張ってまで自分の血筋を見極めようとした老人の話で、「そこまでしなきゃならなかったのかなあ」と残念に思いました。 「スノウ・バレンタイン」(吉田直樹)は、食い違う未来を生きた男女の話というSFファンタジーで、結末がとても哀しかったです。 「OL倶楽部にようこそ」(若竹七海)は、大会社の総務部に勤めていた“あたし”が過去の事件を語るもので、その真相にもびっくりですが、“あたし”の招待にもびっくり! 「最終章から」(近藤史恵)は、売れない俳優・公平と同棲している、売れない作家・ゆかりの手記を元に事件を解明しようとする刑事が辿り着いた真相は……というもので、ひとつの出来事も、裏と表があるというか、捉え方によって見えてくるものが違うということを思い知らされた作品でした。 他の作品もそれぞれ秀作で、収録数も適当ないいアンソロジーだと思います。

 

「気分は名探偵」 (2006年5月)(Library)

夕刊フジに連載された、犯人当て懸賞小説集。 犯行現場は路上の密室?(「ガラスの檻の殺人」/有栖川有栖) 豪雨の貸別荘で起きた劇団員全員変死事件の謎を、吉祥院が解く(「蝶番の問題」/貫井徳郎)。 大学で起きた惨劇に名探偵・木更津が動く(「二つの凶器」/麻耶雄嵩)。 失踪する新幹線で男を殺したのは誰?(「十五分間の出来事」/霧舎巧)。 芸能プロの社長たちを殺したのは誰?(「漂流者」/我孫子武丸)。 容疑者は3人のヒラド・ノブユキ(「ヒュドラ第十の首」/法月倫太郎)。

一番印象に残ったのは「蝶番の問題」。 謎解きをされて初めて犯人がわかりましたが、そう言われれば記述の端々にちゃんとそういうことが書いてありました。 「なるほど!」という感じ。 しかもオチが凄い! やっぱり吉祥院&桂島コンビは“いい仕事してますねぇ”(笑)。 次に印象に残ったのは「漂流者」。 ちょっと変則的な犯人当てですが、心地よく「騙された!」と言えました。 その他の作品もそれぞれよかったですが、読んでみて思ったのは、「私には、こういう趣旨の作品を読む力はないなぁ」ということでした……。

 

「川に死体のある風景」 (2006年7月)

“川に死体のある風景”というテーマの競作小説集。 玉川上水をゆっくり流れていくもの、それは人間に見えた―(「玉川上死」/歌野晶午)。 長良川に沈んだ3台の車の関連は?(「水底の連鎖」/黒田研二)。 枕木岳の小屋に残ったはずの白井が一ノ戸沢で転落死した理由は?(「捜索者」/大倉崇裕)。 音信不通の伯父を探し出すよう父親に命じられた「僕」は……(「この世で一番珍しい水死人」/佳多山大地)。 推理作家の“私”は、近所の川を散歩中に変死体の第一発見者になってしまい……(「悪霊憑き」/綾辻行人)。 江神の友人・石黒は、かつて死んだ同級生・宮野青葉の死に疑問を持つが……(「桜川のオフィーリア」/有栖川有栖)。

一番印象に残ったのは「水底の連鎖」。 水難救助隊の隊員・瀬古が、真相と思われるものに辿り着いたときの「真実がわかって、一体誰が○○○? 〜 裁かれるべき人間は○○○しまったんだから……もういいじゃないか」という言葉には心を打たれました。 残された人々の気持ちを思えば、真相を白日の下に晒すことが、必ずしもいいことではないと思いました。 それと、「川は悪くない」という言葉にも。 自然現象で、川が氾濫したり山が崩れたりするとそれらそのものが悪いように言われがちですが、確かに“川や山自体は悪くない”と思いますね。 自然をどうにかしてしまっているのは人間のほうなのだから。 「捜索者」も面白かったです。 ただ、ご本人もあとがきでおっしゃっていますが、確かにこれは「山に死体のある風景」ですね(笑)。

 

「白昼夢 ホラー・アンソロジー」 (2006年7月)(Library)

現実と夢との境目にある恐怖の輪郭を描く傑作短編集。 朴訥な老女の語りから、次第に異形のものの姿が浮かび上がる「空部屋あります」(井上夢人)。 ありふれた会社の日常に潜む恐怖を切り取ってみせる「永久保存」(篠田節子)。 笑いと恐怖の境界線を綱渡りする「猫恐怖症」(我孫子武丸)。 恐怖小説古典中の古典「猿の手」の系譜に連なる正統派「ささやく鏡」(今邑彩)。 タイトルとは裏腹のストレートなゴーストストーリー「夢の島クルーズ」(鈴木光司)。 エレベーターを舞台に都市伝説のような怪談を語り、鮮やかにひねりを加える「上下する地獄」(若竹七海)。 マッドサイエンティスト物のSF風に幕を開ける「ヴィタミンBEE」(鳴海章)。 スポーツ漫画的なテニスの試合が次第にシュールリアリスティックな光景に変貌していく「百グラムのステーキほどの頬肉」(草薙渉)。 エスカレーション型ギャグがすぐれて現代的な恐怖に暗転する「バーバー『やすらぎ』」(三浦俊彦)。

今村さんの「ささやく鏡」は「よもつひらさか」で既読だったので、若竹さんの「上下する地獄」を目当てに購読しました。 もちろん面白く、期待通りに楽しめました。 “ひねり”はとても効いてきて、まんまと騙されました。 しかし、一番怖かったのは篠田さんの「永久保存」。 スーパーナチュラルな要素は一切なく、いつこういうことが起こっても不思議はないと思われるところが、とても怖かったです。 対して、個人的にダメだったのは「猫恐怖症」「百グラム〜」「バーバー〜」の3作。 想像しただけでゾッとします。 ホラーなんだから当然ですが、これらの方向は苦手です……。

 

「ピュアフル・アンソロジー 告白。」 (2006年9月)(Library)

靴だけしか観たことのない男に恋をする母親に娘は……(「靴を買う」/前川麻子)。 親友が告白した相手は歌手・ジーザスで……(「すばらしき日々」/安藤由希)。 自転車を盗まれた私たちは、それぞれの方法で帰宅することにした(「自転車くるくる」/本沢みなみ)。 由佳里は、美術室の彫像マルスにキスをしていた美希と親友になる(「マルスのキス」/岸虎次郎)。 “あなた”に向かって生い立ちを語る母親は、本当の地獄を教えようとしていた(肩身の花園の廃園)/岩井志麻子)。 遥か昔、恋をした少女はビオラを弾いていた……(「木霊」/芦原すなお)。 海辺の町に住む女子高生三人組の、奇妙な体験談(「話を聞いて」/若竹七海)。 ティーンエイジの少年少女を描いたオリジナル短編集。

目当てはもちろん若竹作品。 読んでびっくり、舞台はなんと“あの”葉崎! 成績優秀・品行方正のテンコ、成績最低・品行下劣・極悪腕力娘のユーリ、成績・運動能力・容姿・慎重体重すべてが全国標準のミサキ。 葉崎山高校に通う3人は、ある日死体を見つけて……という内容ですが、読み易くて面白い! ユーリの言葉遣いの悪さも、地の文(視点はミサキ)のテンポの良さも、本当に私好み。 ○○が出てくるのはちょっと好みとは言いかねますが、その点を差し引いても本当に面白い。 さすが若竹さん、という感じ。 他の作品は、正直言うとそれほどではありませんでしたが、「自転車くるくる」はちょっと良かった。 「高校生ぐらいって、こんな感じだよねえ」というか、「高校生ぐらいなら、こんな感じであって欲しいよねえ」という感想。 今の若い人たちには、“急いで大人になろうとしなくても、時期がくれば嫌でも大人になるんだから、その時々に相応しい過ごし方をしてね”と言いたいです。

 

「謎 001 東野圭吾選 スペシャル・ブレンド・ミステリー」 (2006年9月)(Library)

日本推理作家協会が毎年刊行している「ザ・ベスト・ミステリー」。 その年間ベスト集の中から、70年代・80年代・90年代各1冊ずつを抜き出し、選者の好みの1冊を作ってしまおうという試みのもと刊行されたもの。 記念すべき第1回目の選者は東野圭吾さん、担当するのは1970年・1980年・1990年。 収録作は「新開地の事件」(松本清張)・「母子像」(筒井康隆)・「双子の家」(赤川次郎)・「緋色の記憶」(日下圭介)・「北斎の罪」(高橋克彦)・「ぼくを見つけて」(連城三紀彦)・「手話法廷」(小杉健治)・「サボテンの花」(宮部みゆき)。

収録作8点のうち、既読なのは「双子の家」のみでした……。 普段読まないような作家さんの作品も読めるのが、アンソロジーのいい点ですね。 一番印象に残ったのは「ぼくを見つけて」。 “そういう”誘拐もあるのか、と思い知らされました。 “真犯人”の気持ちは分からなくはないですが、自分の立場を利用してそんなことをするのはダメです。 もちろん、他の方法でもダメですけど。 自分がされたら嫌なことは、他人にもしてはいけません。 「サボテンの花」もよかったです。 子供たちの素直な気持ちが嬉しいですね。 徹を見込んだ信一の観察眼は素晴らしい!(笑) 教頭先生もいい人で、この人のためなら“あんなこと”もするでしょうね。

 

「ピュアフル・アンソロジー 卒業。」 (2007年3月)(Library)

あたしとパルパルの秘密は……(「パルパルと青い実の話」/豊島ミホ)。 千寿と小田切が一生に一度だけ使えるSOSは……(「卒業証書」/大島真寿美)。 木管4人組みとして中学時代を過ごした仲間とはその後……(「春の電車」/梨屋アリエ)。 持病の喘息も治り、バドミントン部に入部した真奈美だが…… (「神様の祝福」/草野たき)。 高校受験のために通い始めた塾で私が出会ったのは……(「君と手をつなぐ」/藤堂絆)。 中学時代の親友・オッコちゃんに偶然出会って……(「彼女を思い出す」/前川麻子)。 葉崎山高校に通う女子高生三人組、またしても発見したのは……(「たぶん、天使は負けない」/若竹七海)。 少年少女の青春を描いたアンソロジー。

「告白。」同様、お目当ては若竹作品。 しかも前回同様主人公はユーリ・テンコ・ミサキの三人組。 面白くないわけがありません。 収録作全7編の中では異質で、ちょっと浮いている感じはしますが(笑)。 テンコの運の悪さもユーリの口の悪さも相変わらずで、でも一生懸命なところがぐっと来ますね。 ひとり冷静なミサキがいなかったらいったいどうなるのかと思うとぞっとします(笑)。 このシリーズで若竹七海名義の単行本にして欲しいです。 他に印象に残ったのは「卒業証書」。 中学から高校へ上がるときは「新しい友達できるかな」とか「勉強についていけるかな」とか、不安なこともたくさんあるでしょう。 そんなとき、こんなSOSを使える権利があったらがんばれるかもしれませんね。 千寿と小田切も、SOSではない理由で再会できるといいなと思います。

 

「小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所」 (2007年5月)(Library)

「こち亀」連載30周年&日本推理作家協会創設60周年を記念した、史上最大の豪華企画。 大沢在昌、石田衣良、今野敏、柴田よしき、京極夏彦、逢坂剛、東野圭吾がそれぞれ描き出す「こち亀」ワールド。 鮫島やマコト、花咲慎一郎らが両さんと夢の競演。

実は「こち亀」はほとんど読んでいませんが、書店員時代には大変お世話になった作品です。 夢のような企画で、とても嬉しいです。 しかも書かれている方々が協会を代表するようなビッグネームばかり。 面白くないわけがありません。 一番印象に残っているのは京極作品「ぬらりひょんの褌」。 「そんな馬鹿な!」と思いつつ、「両さんならあり得るな」とも思います。 大原部長、気の毒な……(笑)。 東野作品「目指せ乱歩賞!」も笑えました。 最後の2行には「やられた!」という感じですが、ページが変わっているのは意図的なのでしょうか。 「新宿鮫」も「IWGP」も未読ですが、いつかは読みたいと思います。

 

「ピュアフル・アンソロジー 手紙。」 (2007年11)(Library)

嘘をついて家を出た20年前の“あなた”への(「あした咲くつぼみ」/小手鞠るい)、留学する晶から、残される妃穂への(「グラノラトフィーバー」/安西みゆき)、小学生の頃、海で拾った病気の少女からの(「雲の規格」/梨屋アリエ)、亜里沙が杉本君へ宛てた(「赤い紙袋の中」/神田茜)、学級崩壊を阻止すべく、密かに戦っている里美への(「ヒーロー」/草野たき)、ミサキに自宅へ届けられた(「読めない手紙」/若竹七海)、それぞれの手紙に込められた思いは……。 少年少女の想いを手紙にこめて綴ったオリジナル・アンソロジー。

一番読みたかったのは若竹作品で、“例の”3人組・ミサキ、ユーリ、テンコが大活躍(?)する内容でした。 相変わらずテンポがよくて、とても読み易かったです。 ユーリが“そういう”人だったなんて! ちょっと感動しました。 口は悪いし頭も悪い、でもなぜか憎めない女の子なんですねえ。 自分の娘のような年齢のせいもあってか、3人とも可愛くて仕方ありません。 いつかはこのシリーズだけをまとめて欲しいものです。 その他の作品もそれぞれよかったですが、「ヒーロー」を読んだときは胸が痛くなりました。 里美ががんばっている姿も辛いものがありますが、野田先生が……という部分では泣けてしまいました。 クラスメイトに対しても、先生に対しても、○○○は絶対にしないで欲しいと思います。

 

「吹雪の山荘―赤い死の影の下に」 (2008年1月)(Library)

雪の降る大晦日、山荘村の清沢郷にやってきたフランス人教師ナディア・モガール。 同じ列車には、フランス語の生徒・若竹七海とその友人・通称ブッキーも乗っていた。 それぞれの思惑を胸に、山荘で新年を迎えようとするその時、幽霊が出るといわれる山荘で、首なし死体が発見される。 幽霊の出現や首なし殺人など謎が深まる中、ナディアたちは真相に辿り着けるのか―。 ナディア・モガール、若竹七海、ブッキー、刈谷正雄、法月綸太郎など、名探偵が多数登場。 豪華執筆陣の本格リレー・ミステリー。

笠井潔、岩崎正吾、北村薫、若竹七海、法月綸太郎、巽昌章という豪華執筆陣ですが、“読んだ”といえるのは北村・若竹作品のみ。 なので、失礼ながらナディアも刈谷は名前すら知りませんでした……。 それぞれが、事件の真相や動機、流れなどを想像しながらのリレー小説ということで、最後に解決予想が掲載されていますが、見事に○○ていますね。 というか、この流れを予想できた読者はいたのでしょうか。 でも、私が無知なだけで、それぞれの作家さんの作品を読んでいれば案外オーソドックスな流れなのかもしれませんが。 どんどんすごい方向に展開していって、まさか“ああいう”背景があるとは思いもよりませんでした。 それぞれの謎も難しく、特に○○○が消えてしまったのには驚きました。 解決予想の段でその真相が明かされていますが、○○さん、ご苦労様でした。 ちょっと難しかった、というのが正直な感想ですが、こういう試みには拍手を送りたいです。

 

「ピュアフル・アンソロジー 片想い。」 (2008年3月)(Library)

なぜか肩が重いと感じた敏則だが、その正体は……(「長い片想い」/坂木司)。 優太が淡い恋心を抱いた相手は……(「プリウスの双子」/前川麻子)。 同じ塾の水戸くんに相談を持ちかけた里穂だが……(「北風のマント」/大崎梢)。 中学に入るまで、あずさがずっと一緒だった“キッキ”だが……(「キッキに」/安藤由希)。 従兄に淡い思いを寄せる瑞穂だったが……(「さつきさん」/草野たき)。 ドアを開けたオレの目の前には、闇の魔導師がいた!?(「おまえたちが信じてる世界のライフはゼロだから」/笹生陽子)。 秘めた思いを抱える少年少女を描いた、前編書き下ろし短編によるオリジナル・アンソロジー。

一番印象に残ったのは「長い片想い」。 ちとせが○える瞬間は、泣きそうになりました。 敏則みたいな人が見つかってよかったね、という感じ。 私のところに“そういう”人(?)が来たら、助けてあげられるでしょうか。 ケーキを焼くくらいならなんとかなるかも。 「北風のマント」もよかったです。 水戸くん、大人ですねぇ。 それに引き換え阿久津は……。 水戸くんと里穂のその後も気になります。

 

「謎 002 宮部みゆき選 スペシャル・ブレンド・ミステリー」 (2008年9月)(Library)

シリーズ第二弾の選者は宮部みゆきさん。 選ぶ年代は197119811991年。 収録作は「男一匹」(生島治郎)、「企業特訓殺人事件」(森村誠一)、「闇の中の子供」(小松左京)、「暗い窓」(佐野洋)、「首くくりの木」(都筑道夫)、「歩道橋の男」(原ォ)、「酷い天罰」(夏樹静子)。

どれも未読でしたが、書かれた当初を思い起こさせる内容でした。 「今なら絶対あり得ない!」という出来事も多かったし、「こんなことがあったんだ……」と絶句するような出来事もあったし。 特に印象に残ったのは「酷い天罰」。 真犯人の動機には納得や共感はできませんが、個人的には「○○は○んでも仕方ないかなあ」と思ってしまいました。 どうせなら「“そう”だったらよかったのに」と言ったらさすがに言い過ぎでしょうか……。 「企業特訓殺人事件」にはびっくり。 「“こんな”こと、本当にやってたの〜!?」という感じです。 速水の気持ちはわかりますが、結果的には目的を果たしたとは言い難い(というか言えない)ことになってしまって、「これからどうするの?」という疑問が残りました。 「きっとそのままなんだろうな」と思うと、ちょっとがっかりなような「でも仕方ないよね」と納得もできるような、複雑な気持ちです。

 

「謎 003 恩田陸選 スペシャル・ブレンド・ミステリー」 (2008年9月)(Library)

シリーズ第三弾の選者は恩田陸さん。 選ぶ年代は197219821992年。 収録作は「死者の電話」(佐野洋)、「一匹や二匹」(仁木悦子)、「眠れる森の醜女」(戸川昌子)、「純情な蠍」(天藤真)、「奇縁」(高橋克彦)、「アメリカ・アイス」(馬場信浩)、「帰り花」(長井彬)、「マッチ箱の人生」(阿刀田高)。

今回も、どの作品も未読でした。 特に印象に残ったのは「奇縁」。 「これってホラーじゃないの〜!?」と思うのは私だけ? “こんな”奴がいたら本当に怖いです……。 「アメリカ・アイス」の真相は私のツボでした。 「ちょっとやり過ぎじゃないの?」と思わなくはありませんでしたが、舞台が舞台、書かれた年代が年代だけに、こういう展開もありなのでしょう。 「死者の電話」は、どういう真相かと思ったら「そう来たか!」という感じ。 そりゃあ阻止しますよね。 でも、当人たちは何も悪くないのに、真相を知ったら悲しむでしょうね。

 

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