堂場瞬一 (どうば・しゅんいち)

「孤狼 刑事・鳴沢了」 (2005年10)(Library)

一人の刑事が死に、一人の刑事が失踪した。 本庁の理事官に呼ばれた鳴沢は、新たな相棒・今敬一郎と共に、消えた刑事の捜索を、極秘に命じられる。 調べを進めるうちに明らかになる刑事たちの不可解な行動。 謎の組織の執拗な妨害、鳴沢の愛する人への脅迫。 警察を辞めた元相棒・冴を巻き込み、事件は思わぬ展開を見せる。 果たして事件の真相は……? 刑事・鳴沢了シリーズ待望の第4弾。 文庫書き下ろしで刊行。

オーソドックスな内容かもしれませんが、こういう警察小説を読むと安心します。 事実としてではなく、小説としてですが。 警察内部で、あってはならないことが起きており、それを糺そうとするとする鳴沢は、やはりカッコイイです。 実際にこんなことがあるなら許せませんが、まだ自浄作用が働くうちはなんとかなるのかな……。

シリーズ第5弾『帰郷』が、2006年2月刊行予定なので、そちらも楽しみです。 タイトルと、本書の内容から推測すると、鳴沢の故郷・新潟が舞台かもしれません。 恋人・優美とも進展ありかも?

 

「帰郷 刑事・鳴沢了」 (2006年2月)(Library)

父の葬儀の翌日、鳴沢のもとを一人の青年が訪ねてきた。 用件は、新潟県警“鬼の一課長”と呼ばれた父にとって唯一の未解決事件を再捜査しろというものだった。 奇しくもその事件の時効は父の葬儀当日だった。 忌引き休暇を利用して、父が遺した事件を追う鳴沢は、真相にたどり着くことができるのか。 文庫書き下ろしのシリーズ第5弾。

真犯人は比較的早い段階で目星がつきますが、新たな事件の真相はあまり共感できるものではありませんでした。 確かに、過去の事件の場合は同情の余地もあったと思いますが、新たな事件の経緯は結局甘ったれの言い訳にすぎません。 「そんなことが言えるのは、あんな酷い目に遭ったことがないからだ」と言われれば、反論はできないかもしれませんが、もっと酷い目に遭ってもまっとうに人生を送っている人も大勢いるわけですから。 ただ、過去に間違いがあったとすれば、やはり○○の判断だったかもしれません。 実際にはよかれと思ってやったことかもしれませんが、大人の責任を果たすことにはならないと思います。 真犯人の最期も衝撃的でした。 優美との関係がイマイチ進展しませんでしたが、次作「密計 刑事・鳴沢了」では何かが起こりそうです。

 

「讐雨 刑事・鳴沢了」 (2006年8月)(Library)

連続少女誘拐殺害事件の犯人・間島が逮捕され、捜査本部は解散を間近に控えていた。 最後の裏付け捜査を担当した鳴沢は、相棒・聡子と共に車の爆破事故に巻き込まれる。 爆破犯の要求は間島を釈放すること。 要求が叶うまで、何度でも爆破するという犯行声明。 犯行の動機は? 目的は? そして真犯人はいったい……。 文庫書き下ろしのシリーズ第6弾。

正直に言えば、間島がどうなろうとしったこっちゃないというのが本音です。 爆破犯の要求通り釈放して、間島がリンチに遭おうが殺されようが、たぶん誰も困らないと思います。 ただ、どんなひどい目に遭わされた人でも復讐は許されておらず、残酷な殺人鬼でも、殺してしまえばその人も同じ殺人犯になってしまうというのが現状です。 もちろん、復讐しようと考える人はそんなことはわかっているし、そんなことも厭わないのでしょう。 「そんなことをして殺された人が喜ぶと思うのか」というのは詭弁です。 殺されてしまった人がどう思うかなんて、考えても意味がありません。 答えを聞けるわけではないし、そもそも答えられないのですから。 ただ、殺人犯を殺してやりたいと思っても、実行できることはほとんど不可能です。 普通の人間なら、どんなクズでも殺すことなんてできません。 怖いと思うのが当然です。 それは意志が弱いからとか臆病だからではありません。 それが普通なんです。 今回の犯人はたまたま実行し得る力があったのが災いしました。 真犯人の気持ちはわかるつもりですが、やはり実行してはダメなんです。 間島のような罪を犯した人間が、のうのうと生き永らえるのは確かに間違っていると思います。 万が一社会に戻ってきて同じ犯行を繰り返したら取り返しのつかないことになるのだし、死んだほうが世の中のためになるのはわかりきっていても、裁判以外で裁いてはいけないんです。 どんな犯罪者にも弁護人がついているのを見ると、どんな気持ちで弁護しているのかと不思議に思うことがよくありますが、それが現在の日本の現状です。 限界はあっても、自分の身は自分で守るしかないということでしょうか。 当初、「密計」というタイトルの予定が実際には「讐雨」になっていますが、こちらのほうが断然いいです。 読了後、実感しました。

 

「血絡 刑事・鳴沢了」 (2007年2月)(Library)

ニューヨーク市警で研修中の鳴沢の元に、勇樹がバスジャックに巻き込まれたという凶報が届いた。 現場に駆けつけた鳴沢が見たのは射殺された犯人の遺体で、勇樹の姿はなかった。 見え隠れするチャイニーズ・マフィアの大物トミー・ワンの影。 わずかな手がかりを頼りにニューヨーク、アトランタ、マイアミを、鳴沢が爆走する。 書き下ろしのシリーズ第7弾。

舞台がアメリカという個人的にはあまり読み易いほうではない設定でも、勇樹が○○された理由は早い段階で想像がついたので、さくさく読み進むことができました。 むしろ、鳴沢がなぜもっと早くそれに気付かないのか不思議でした。 他に読み易かった理由としては、鳴沢の周りにいい人がたくさんいたことが挙げられます。 都合がよすぎると言えばそうですが、せめてフィクションの中くらいはそうであって欲しいと思うので。 トミー・ワンも、行動はどう考えても誉められたものではありませんが、動機としてはわかる気もします。 もちろん犯罪は犯罪だし、そうやって○かったことを孫が知ったらどう思うかを考えれば、やってはいけないことだったと思いますが、しょせんマフィアも人の親だな、と思いました。 最後に○○られて○されてしまうと、さらに気の毒な感じに…。 マフィアとして今までしてきたことを考えれば自業自得なので仕方ないことですが、せめて孫だけはまっすぐに成長して欲しいものです。 鳴沢と優美はどうなるのでしょう。 個人的には冴のほうが好きなのですが……。

 

「被匿 刑事・鳴沢了」 (2007年7月)(Library)

鳴沢が勤務することになった西八王子署管内で、地元の代議士が不審死を遂げた。 だが、ろくな捜査もされないまま事故死と断じられてしまう。 そんな中、地検から裏情報を得た鳴沢が取った行動は……。 書き下ろしのシリーズ第8弾。

今回は、○○がほとんど登場しなかったので、個人的には安心して読めました。 過去の登場人物たちがちらほら顔を出していますが、「この人誰だっけ……?」とあやふやな記憶を辿りながら読み進めていたので、少し時間がかかってしまいました。 今作の登場人物で一番印象に残ったのは、なんといっても警視庁捜査一課刑事・藤田。 鳴沢のバディとしては最高です。 次作以降も登場するといいな。 代議士不審死の真相としては、「そうなっても仕方ないでしょう」というのが正直な感想です。 ○○されてしまうのも仕方のないことですが、充分に情○○量の余地はあると思います。 残念なのは、そんな奴のために“あんなこと”をしなければならなかったこと。 本人が○んでしまっては、罰や苦しみを与えることもできません。 もう二度と同じ過ちは犯さないで欲しいです。

 

「長き雨の烙印」 (2008年2月)

かつて幼女暴行殺人事件の犯人として逮捕された庄司が、事件から20年経って冤罪を申し立てた。 しかし、直後に過去の事件と似通った手口の幼女暴行事件が起こり、庄司が再び連行される。 庄司の友人・伊達は、県警捜査一課の刑事になっており、かつて庄司を逮捕したベテラン刑事・脇坂と対立しながらも捜査にあたるが……。

救いのない真相で、ちょっとげんなりしてしまいました。 まず信じられないのは真犯人。 冤罪を甘んじた庄司も庄司ですが、真犯人もあんまりです。 20年を棒に振ってでも守るような人物だったのでしょうか。 庄司の支援活動をしている弁護士・有田も、まったく信用できない人物。 こんな人に弁護を頼んだのが間違いだったとも言えます。 脇坂も信じられない。 もちろん、犯人は逮捕しなくてはなりませんが、今回の事件に関して彼のやったことは常軌を逸しています。 結局は有田と同じで保身しか考えていない。 こんな人が警察官だなんて、恐ろしい限りです。 20年前の被害者の父親・桑原が一番気の毒だったと思います。 「そんなことをしても気は晴れない」とか「そんなことをすれば同じところまで堕ちるだけ」とか、○○に関しては実行してもいいことがあるとは思えません。 でも、それは部外者の言葉であって、当事者にすれば○○することに意義があるのではないかと思います。 もちろん、実際に○○という名目で人を傷つければ自分も加害者になってしまうので、諸手を挙げて賛成することはできませんが、個人的には被害者側に感情移入してしまいます。 結局、桑原は真の○○を果たすことはできなかったわけですが、「もうゆっくり休んでください」という感じです。 憎しみだけが生きる支えだったなんて、あまりにも哀し過ぎます。

 

「疑装 刑事・鳴沢了」 (2008年2月)(Library)

鳴沢が勤務する西八王子署管内で、一人の少年が保護された。 彼は、日本語はわかるようだが一切喋らず、身元もわからなかった。 怪我をしていたので病院に入院させたが、ある日忽然と消えてしまった。 彼と勇樹をどことなく重ねて見ていた鳴沢は、藤田とともに調査を進めるが……。 書き下ろしシリーズ第9弾。

子供の交通事故死の真相は、あまりにも酷いものでした。 真犯人の身勝手な動機、さらには自己保身のために重ねた犯罪。 ○○にまで手を掛けるなんて許せません。 こんなやつは同情の余地はないと思います。 鳴沢と藤田、美鈴のトリオがいい感じに機能して、これからの絡みも楽しみになりました。 今回は勇樹は声の出演(?)のみ、優美に至ってはまったく登場しませんでしたが、個人的には鳴沢と優美は○○だと思います。 冴のほうがいいのに……。 これからどう展開していくのか、そちらも気になります。

 

「蒼の悔恨」 (2008年5月)

神奈川県警捜査一課の真崎薫は、コンビを組んだ赤澤奈津とともに連続殺人犯・青井毅郎を追い詰めたが、一瞬の隙をつかれ二人とも怪我をし、青井を取り逃がしてしまう。 手掛かりのないまま時間が過ぎ、退院した真崎は職場復帰を願うが認められず、単独で青井を追うことに。 やがて奈津も真崎の捜査に加わるが、それぞれの過去が明らかになるにつれて複雑に絡み合った事件の真相も明らかになっていく―。

青井が恐喝していた相手や、そのネタは比較的わかりやすかったですが、偶然なのか運命なのか考えてもわかりませんが、哀しい話だと思いました。 出会うべくして出会ったのだと思いますが、やはり過去は消せないものなのだと実感しました。 自分のしたことではなくても、償いという気持ちを持ってしまったら、それは純粋な気持ちではなくなってしまうのでしょう。 お互いに、そんなつもりではないと思っていても、どこかで過去が染みを作ってしまう。 あまりにも哀しい出会いだと思います。 それを乗り越えて欲しかったと思いますが、できないのが当然なのかもしれません。 真崎は警察を辞め、奈津は残りましたが、交わらないのならせめてお互いいい方向に進んで欲しいと思いました。

 

「青の懺悔」 (2008年6月)

神奈川県警を辞めた真崎薫は探偵事務所を開いたが、なかなかまともな仕事にありつけない日々を過ごしていた。 そこへ、高校時代の野球部の仲間・長坂が訪ねてくる。 スポーツ選手の代理人をしている彼は、同じく高校時代の野球部の仲間でプロ野球選手となった結城の息子が誘拐されたと相談に来たのだが……。

誘拐の真犯人は○○だろうというのは途中でわかりましたが、動機が“そういう”ことだというのには思い至りませんでした。 過去の出来事を「あの時ああしていれば」とか「あの時あんなことがなければ」とか悔やんでもどうにもならないとは思いますが、○○が悔しかっただろうということは想像に難くありません。 確かに、結城は“ああいう”人で、“そう”される必然性もあるかもしれませんが、なぜかいまひとつ○○に同情や共感しきれませんでした。 ○すようなやり方が気に入らないのかも。 ○○にとって○○は果たされたことになるのでしょうか。 薫と奈津が○いていたのは嬉しいことです。 続編もあると思うので、楽しみです。 今度の“あお”はどの字を当てるのでしょうか。 藍とか碧くらいしか思いつきませんが……。

 

「久遠 刑事・鳴沢了」(上)(下) (2008)(Library)

夜明けに鳴沢の家のインターフォンを鳴らしたのは青山署の刑事たちだった。 アリバイを確認され戸惑う鳴沢は、前夜会っていた情報屋が殺されたことを知る。 容疑者に挙げられ、自らの疑惑を晴らすために立ち上がる鳴沢だが、美鈴の父親でもある警視庁公安部刑事・山口までもが殺され、再び彼に嫌疑がかかる。 身の潔白を証明しようとするも、同僚・藤田に警察内部の見えない圧力がかかり孤立無援に。 鳴沢は真相を突き止めることができるのか。 “刑事・鳴沢了”シリーズ完結。

シリーズ完結ということで、過去の事件や登場人物に触れられ、細部までは覚えていないことに愕然としました……。 「この事件ってなんだっけ?」みたいな。 読み返す時間はなかったのでそのまま読み進めましたが、なんとななるものですね。 それにしても、本当に警察内部で“こんなこと”が行われているのでしょうか。 だとしたら恐ろしい……。 一番の黒幕が○○だったことにはびっくり&がっかり。 一般人は何を信じて頼ればいいのかわかりません。 もちろん、“こんな”人は一握りだと思いますが、それだけでも“いる”という事実が怖いです。 鳴沢にも味方がこんなにいたんだ、と思うとホッとします。 個人的には冴と○○して欲しかったけど、無理でしたね。 それにしても“そういう”オチだとは……。 そりゃあ、鳴沢も年貢を納めるしかありませんね(笑)。 大西や藤田、美鈴、冴、今(こん)など、鳴沢には大事な仲間がいるので、これからも一刑事としてがんばって欲しいと思います。 番外編があるといいな。

 

豊島ミホ (としま・みほ)

「ぽろぽろドール」 (2007年7月)

かすみは、死んだおばさまの形見として等身大の男の子の人形を手に入れた。 実は、この人形にはふたりだけの秘密があって……(表題作「ぽろぽろドール」)。 “人形”をテーマにした全6編の短編集。

確かに、人形は“人の形をしている”ということもあって、簡単には捨てたりできないものだと思います。 私の場合は動物のぬいぐるみもそういう対象で、最近は絶対に(少なくとも、極力)増やさないことにしています。 一番印象に残ったのは、唯一の書き下ろしで最後に収録された「僕が人形と眠るまで」。 交通事故に遭い顔に火傷を負ってそれが整形すらできないほどのひどい傷だったという主人公・あきらは、大学進学を機に東京で一人暮らしを始めるが、旧友とでかけた秋葉原である人形を見つけ……、という内容ですが、彼のこれからの人生を思うと気の毒でなりません。 “人形を愛する”ことが間違ったことだとは思いませんが、度が過ぎると人形にしか理解を求められなくなって、ひいては周囲に溶け込めなくなってしまうと思います。 周囲に溶け込むことがその人にとって苦痛でしかない場合には、無理に溶け込む必要なないのかもしれませんが、人間同士の繋がりは、人形では得られないものもあると思うので、別の次元で考えるほうがいいのかな、と思いました。

 

鳥飼否宇 (とりかい・ひう)

「逆説探偵」 (2005年9月)

私にとって初の鳥飼作品。 他の作品の傾向を知らないのでなんとも言えませんが、なんかすごい。 

主人公の五龍神田刑事は、実は単なる○○○の○に過ぎない。 まあ、愛すべきキャラクターとも言えますが。

謎解きとしては面白かったけど、犯人の動機が結構浅はかなのはちょっといやかも。

ラストは、納得できたようなできないような……。 続きというか、たっちゃんのその後が気になります。

 

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